焦がれる夏
弍拾玖 耐えろ、粘れ
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
うが、高雄は愚直に真っ直ぐを投げ込む。
ガキッ!!
鈍い音がして、打球はフラフラと三塁ファールゾーンに上がる。サードの最上がフライをしっかり捕球して、ワンアウトとなる。
「高雄!新記録だな!142出たぞ!」
ショートの琢磨が声をかけ、高雄がすっかり自信を取り戻した顔で頷く。
これがエースの投球。
"最弱世代"のエースの投球だった。
ーーーーーーーーーーーーーー
<6回の裏、是礼学館高校の攻撃は、5番サード最上君>
6回表を3人で斬った是礼のその裏の攻撃は5番サードの最上から。比較的活発な打線の中で、今日はここまで2打数無安打と当たっていない。
(インコースに二つ詰まってんだよなぁ。またインコース投げられたら…)
最上はベンチの冬月を見る。
攻撃前の円陣では、狙い球の継続を強調していた。今までと変わらず、外のスライダーに目付けしてしっかり踏み込めと。
(…俺たちは能力が無いんだ。監督を信じないでどうするんだ。俺たちの力だけでどうにかできる訳ねぇよ。)
最上は今まで通りベースギリギリに立つ。
分田にも負けていない181cm85kgの体格でドシッと構えた。
ガキッ!
真司は変わらず踏み込んでくる最上に対して、負けじとインコースを果敢に突き続ける。元々腕が長めでインコースが苦手な最上はファウルにするのが精一杯だ。
(本当にギリギリしかこねぇなぁ。デッドボールは怖くないのかよ)
あっさりと追い込まれた最上は打席で歯ぎしりする。あの初回のバント飛球を捕れなかった上、打撃でも凡打を続ける訳にはいかない。
何とか自分の仕事をしたい。
焦る最上に、ようやく真司が甘い球を投じた。真ん中内寄りのコースに、中途半端なスピードの球がフッと入ってきた。
(いくしかないッ!)
最上はすかさず食らいついた。
あまり回転のかかっていないその球を思い切り引っ張りこむ。
カァーーン!
恵まれた体格からのフルスイングが球を叩き潰し、白球が"光線"となってレフト線にぐんぐん伸びた。
(打球…速ッ!!)
フェンス間際に深々と守っていたはずの日向も、打った瞬間追うのを諦めてクッションボールの処理に備える。
ドンッと音を立てて打球がポール下のフェンスに当たり、グランドの内側に戻ってくる。
「セカン行った!!」
日向がボールを拾って振り向くと、ショートの青葉が球を呼ぶ。打った最上は一塁を蹴って二塁に向かっていた。日向は中継の青葉に投げ、捕った青葉は二塁ベース上の健介に投げる。
手際良く中継プレーが為されたが、最上の足が勝った。
「よっしゃーー!!」
二塁ベース上で、最上が自軍ベンチに高々と拳を突き上げた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ