決戦〜前夜〜
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れから始まる地獄を少しでもマシにするようにな」
「私がですか」
「君がだ。それが見当違いであれば、私やスルプトが訂正するだろう。だから、安心して話してほしい――期待している」
「期待されるのは好きではないのですが。今から資料をお配りします。帰りの装甲車でまとめたものなので、手書きですが……」
+ + +
アレスの基本構想に、レティルとスルプトが手を加えて、防衛計画がまとめられた。
当初の防衛計画からは大きく外れたものに、クラナフは驚いていたがレティル少佐を初めとして、全員の総意に認める事となった。
計画に基づいて、各隊の隊員達は準備を行う。
塹壕を掘り、雪を固め、罠を仕掛ける。
計画さえ決めれば、それに向かって一丸となるのは良くも悪くも軍のいいところだ。
誰もが死なぬために、睡眠時間さえ削って準備している。
それでも間に合うかどうか。
発電機からおくられる白光色のライトが夜を照らしながら、アース社製の削岩機が塹壕を掘り進める。担当の第二小隊長が設計図を見ながら、激を飛ばしている。
それを雪の堤上から見下ろしながら、アレス・マクワイルドは白い息を吐いた。
「寝ないのですかな」
「軍曹?」
声に振り向けば、堤上をのぼる老兵士の姿がある。
身体を持ちあげれば、吹きすさぶ寒風に身体を震わせて、コートの前を押さえた。
その手にあるワインボトルとグラスに、アレスは表情を綻ばせる。
「明日も早いでしょう。休憩時間にきちんと休憩をとるのも兵士の勤めですぞ」
「そういう軍曹は?」
「私は雪見酒を楽しもうかと――いかがです?」
手にした二つのグラスに、アレスは苦笑を浮かべる。
準備が周到だと、一つを手にすればワインが注がれる。
器用に自分のグラスにも注いで、ワインを雪に埋める。
「寒いのは嫌ですが、冷蔵庫がいらないのはいいですな」
「この寒さならホットワインの方が嬉しいけどね」
「違いない」
グラスが打ち鳴らされて、二人は同時に口に含んだ。
冷たいワインといえど、少しの熱さが喉に残る。
熱さの残る息を吐けば、白い息は闇に消えた。
耳に残るのは唸る吹雪と作業する兵士達の声。
それを肴にして、カッセルが再びワインを注いだ。
「初戦で緊張しているというわけではなさそうですな」
「緊張しているように見えるかい?」
アレスの声に、カッセルは首を振った。
「少尉は不思議ですな」
言葉を残して、カッセルはワインを口に含んだ。
「まだ二十歳であるはずなのに、年に似合わない落ち着きがある。まるで歴戦の将のように部下を安心させる。そうかと思えば、時にはまだ若く助けなければいけない気にもさせる。果たしてどちらが本当の少尉なのです?」
「
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