決戦〜前夜〜
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それも任官三か月足らずの若造にだ。
認める事も出来ず、代わりに言い訳を口にしようとした小隊長は、強いアレスの視線に言葉を奪われた。
どうすると問いかける視線が、互いを向いて、やがて懇願する視線がスルプトを向いた。
結論を求められている。
そう感じて、スルプトは手元の書類に視線を落とした。
手元の書類は過去の防衛計画に基づいてしっかりと書かれている。
これが失敗したところで、上は咎めないだろう。
そもそも装甲車が満足に動かぬ状況で戦えと言う方が無茶な話だ。
だが。
「失敗すれば、我々は死ぬか」
「俺達などどうでもいい。死ぬのは部下だと言う事をお忘れなきよう」
「そうだな」
スルプトは首を振り、やがて視線をあげた。
「私もこの防衛計画を再び立て直す必要があると思うが、皆はどうかね?」
「それは……」
「私もそれが正解だと思う」
スルプトの言葉にいまだ不満を浮かべていた者たちも、続いた言葉に振り返った。
閉じられた扉が開き、冷気が流れ込む。
そこにいたのは一人の兵士だ。
防寒服が破れ、乾いた血を顔に張り付けて、戦場から帰還したという姿に誰もが息を飲んだ。
「レティル少佐!」
誰かが呼んだ名前が引き金となって、慌ててレティルを室内に引き入れる。
椅子を差し出す姿に、レティルは小さく礼を言いながら、腰を下ろした。
「報告に行けば、ここで会議をしていると聞いてね。このような形で失礼する」
小さく息を切らせて、レティルは痛みをこらえるように身体をよじった。
「少佐。お身体に障ります。すぐに衛生兵を」
「構わない。この程度は致命傷ではない――それよりも防衛計画をまとめるのだろう」
「それは我々が……」
「現場を見てきた私がいた方がいいと思うがね。そうだろう、マクワイルド少尉」
「ええ。ですが、ここで無理をなされるより、少佐には早く回復していただいた方がいいかと。すぐに地獄が待っています」
「人使いの荒い男だ。構わない、ここで一時間座っていたところで、傷の治りは同じだ」
アレスの言葉にもレティルは楽しげに笑い、机で組んだ手に身体を預けた。
小さく息を吐いて、アレスを見る。
「メルトラン中佐からだ。すまなかったと……」
アレスは眉をあげた。
突然の言葉に、アレスを初めとして誰もが首をかしげている。
なぜ、戦場に散ったメルトラン中佐がアレスに謝罪するのかと。
それをいち早く理解したのは、アレスだった。
小さく首を振れば、レティルと同じように息を吐いた。
「すんだことです」
「ああ。だが、まだ終わっていない――そうだな」
「これからが本番です」
「そうか。ならば少しでも良い結果となるよう、君の意見を聞かせて欲しい。こ
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