決戦〜前夜〜
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」
「勝てる状況であっても、敵の罠によって敗北した。そして、その罠はいまだに続いている事をお忘れですか?」
アレスの口にした現実の前に、口が閉ざされた。
あえて彼らがみようとしていなかった現実だ。
こちらの装甲車はいまだに多くが動かぬ状況になり、基地の防衛に避ける人員は一個中隊ほどの人数しかない。
目を背けていた現実をアレスが告げていけば、スルプトが苦虫を噛み潰した顔で止めた。
「わかった、わかった。マクワイルド少尉――こちらが不利だということがな。だからこそ、そのために防衛計画をここで立てているのだろう」
「これがですか」
アレスは目の前の書類を手にした。
「敵軍到着までの稼働予想の装甲車が十五台――これを盾にして、本国からの支援部隊を待つと」
「何が不満なのかね」
「本当に十五台の装甲車が動くと思いますか」
「脳波認証システムの妨害解除までには一台につきおよそ四時間。敵が真っ直ぐにこちらに向かったとしても、十分に対応できる数値だと思うがね」
「妨害を解除した場合は手動で動かさなければならないとお伝えしたはずですが」
「それは聞いている」
「ならば。一体、この十五台もの装甲車を誰が動かすのです?」
「それは各部隊に配置された人員が」
「防衛計画では、装甲車の乗車人員は四名。このたった四名が装甲車を動かして、索敵し、砲弾を込めて、敵と交戦しながら、無線で報告して、他の装甲車を援護するのですか?」
アレスの指摘した事項に、小隊長は口をつぐんだ。
僅か二行足らず。装甲車の運用について書かれている。
ほとんどコンピュータ制御されている現状でも装甲車の最低人員は四名だ。
それとほぼ同数で運用しようとしている現状に、誰も異を唱えない。
本来は気づいていたのかもしれない。
だが、希望的観測をするあまりに誰もそれを満足に見ようとしていない。
手元の書類を目にしてスルプトは静かに首を振った。
「確かに大変かもしれないが、他に割ける場所がない」
「ないのであれば、十五台を運用しなくても構わないでしょう。十台の運用とし、他を予備とすればいい」
「馬鹿な。装甲車一台で兵士何人分の戦力だと思っている」
「満足に動かせれば。しかし、この状態ではせいぜい半分以下の戦力でしかない」
書類を机において、アレスは周囲を見渡した。
静かに、それぞれの顔を窺うように一巡して、スルプトへと目を向ける。
「戦力が乏しい。ならばこそ、形ばかりの防衛計画で取り付くのではなく、いまできる最大限を一から見直す必要があるのではないですか」
告げられた言葉は、至極まっとうな言葉であった。
だが、誰も賛意を示す事ができない。
肯定すれば、それまでの自分たちの意見を無にする事になる。
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