第140話
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麻生に引っ張られ、何とか人だかりから抜ける事ができた。
ある程度離れると、美琴の手を離して後ろを振り返った。
「それで、これからどうす・・・どうした、顔が赤いぞ。」
「な、何でもないわよ!
そ、それよりこのバイオリンを預けに行くわよ!」
顔を真っ赤にさせながら、前にいた麻生を追い抜いて行く。
麻生は何故、顔を真っ赤にしているのか全く分からないまま美琴について行く。
クロークにバイオリンを預けて言った。
「とにかく、地下街に行くわよ!」
今度は美琴が麻生の手を取って引っ張って行く。
「おい、引っ張らなくてもちゃんと歩く。」
「だ、黙って着いて来なさい!!」
「・・・・・」
これ以上言っても無駄だと分かった麻生は口を閉じる。
そのままずるずると引きずられ、地下街へと連れて行かれる。
九月一日にイギリスからやってきた魔術師シェリー=クロムウェルと、彼女の操るゴーレム『エリス』によって結構な被害が出た場所だが、今ではもう破壊の爪痕は見当たらない。
砕かれた床や柱は補修され、喫茶店のウィンドウなども新しいものと取り換えられていた。
よほど顔を近づけてじっくりと見ない限り、違いは分からないだろう。
こんな急ピッチ工事が行われたのは、その後に控えていた大覇星祭の影響もあっただろう。
開催目的の半分近くが学園都市のイメージアップを図った誘導宣伝というぐらいなのだから、街が壊れていては話にならないのだ。
地下とはいうが暗いイメージはなく、ピカピカに磨き上げられた床や壁を、蛍光灯や発光ダイオードを束ねたLED電球が真昼のように照らし出している。
通路に面した喫茶店や洋服店などはガラスをふんだんに利用していて、実際の面積以上の開放感を演出していた。
「それでどこに向かっているんだ?」
「あれよ、あれ。」
地下街を歩きながら麻生は美琴に聞く。
その問いかけに美琴はある店を指さした。
携帯電話のサービス店である。
サイズとしてはコンビニの半分ぐらいしかなく、大きなガラスウィンド越しには横一線に並べられたカウンターと椅子、後はマガジンラックに収まった薄っぺらい機種カタログぐらいしかない。
入口の前に置いてある宣伝用の縦長ののぼりには大手メーカーの物と学園都市オリジナルの物が分けてあった。
学園都市は、外と比べると科学技術が二、三〇年進んでいるとされている。
外と中、互いの機種も一長一短ではあるのだが、緊急時にはどちらのサービスが先に復帰するか分からなかったりするので、何を選ぶかで一週間以上悩みまくる学生もいるそうだ。
ちなみに麻生の携帯は愛穂と桔梗が選んだ物だ。
彼自身、携帯なんぞ必要ないと思っていたのだが二人に強く勧められたので携帯を持つことになった。
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