第2話 ヘキサ
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「ヘキサがやめる!?」
大声を出したモン太の口を、チューやんとナッツが左右から塞いだ。モン太がもがもが言う。
教室の他の生徒がこちらを見たが、すぐ自主練や自分たちのおしゃべりに戻った。
「中学に入ったらベンキョーにセンネンしなさいっておウチの人に言われたんだって」
「マジかよ」
「それでヘキサ、最近元気なかったんだね」
咲は正座の膝の上で拳を握った。咲がこの話を知ったのは、ヘキサがそれを決定事項としてコーチに伝えた後で、だ。
“あのね。その、わたし、来年ここ、辞めることになったの”
寂しそうに、それでも微笑んでいたヘキサ。もちろん咲たちに先に言ったとて、咲には何もできない。ヘキサの家の人を説得することも、ヘキサに続けてくれと訴えることも、何の力も持たない咲では不可能だ。
だから今から、悔しいけれど、ヘキサがいなくなることを前提に話を始めなければいけない。
「あたしたち、ヘキサが辞めるまでに、何かしてあげられること、あると思う?」
仲間もまた悩み始めた。
「できるだけいっしょにいるようにするとか?」
「それ今もしてるじゃん」
仲良しグループなのだ。ヘキサだけ学区が違うので学校の時間は一緒にいられないが、ダンススクールでは常にこの6人でいる。
「……みんなでコンクール以外にも出る」
「チューやん、ナイス!」
「テレビの一芸大会とかやってっかな」
「でも今は、ビートライダーズホットラインがあるからダンスの番組はのびないって、なくなってきてるわよ」
その時、咲の頭にひらめきが降りた。
「――ビートライダーズ」
一度だけヘキサが零した言葉を思い出す――わたしもやってみたいな――
「それよ、ナッツ、それよ!」
「え? まさかあんた……」
マジか、という目でトモもモン太もチューやんも咲をまじまじ見てくる。咲は自信を湛え、きっぱりと肯いてみせた。
ヘキサは学校を終えて、いつものようにダンススクールへ向かっていた。足取りは重い。
(こうして通えるのもあと1年とちょっと……ううん、兄さんのことだから、中学受験の時にはもう辞めろって言われるかもしれない)
まだ後1年とちょっとあるじゃないか、とオトナならば言うだろう。だが、幼いヘキサにはそう割り切れない。楽しい時間はずっと続いてくれなければイヤだと感じるのがコドモなのだ。
(何だかみんなこそこそしてるし)
咲たちはヘキサ抜きで何かをボソボソ話し合うことが増えた。ヘキサが何の話だと聞いてもごまかされるばかり。ヘキサはもっと気分が重くなった。
「こんにちは――」
俯いたままダンススクールのガラス戸を開け、いつものメンバー
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