暁 〜小説投稿サイト〜
少年少女の戦極時代
第1話 室井咲
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「まーっじっくたぁいむ とーっりくじゃなーい♪ まほーひろー はんぱねーぞー♪」

 咲は最近のお気に入り曲を口ずさみながら、ダンススクールの教室のガラス戸を開けた。

「こんにちはー」
「へい、らっしゃーい」

 それは寿司屋です、とすでにツッコむ者もいないコーチの出迎え口上。

 咲も答えず、一面ガラス張りの教室の一角で、フローリングに固まった2人組へと向かう。

「やっほー」
「あ、咲。観て観て! 新しいビートライダーズホットライン」
「またバロンが一位だよ」
「へー、見して見して〜」

 友達のナッツとトモが空けてくれたスペースに咲は座り、タブレットを覗き込んだ。タブレットから流れる、DJサガラの陽気な実況。そして、赤と黒(トランプツートン)のゴシックコスチュームの一団が、ホログラフの怪物を操る映像。

「あーあ。ここんとこランキングがかわりばえしなくってツマンネ」
「咲、どこ派だっけ〜?」
「蒼天」
「シブい」
「ナッツはPOPUPよね。万年2位の」
「言うな」
「どうせふてーき配信なら、ランキングがドドン! って変わった時にやってくれればいいのに〜」

 咲たちがくだくだとしゃべっていると、教室のガラス戸が開いて男子が二人入ってきた。その男子たちにトモが声をかける。男子たちはすぐ咲たちのほうへ来た。

 彼らはモン太にチューやんという。もちろんニックネームだ。モン太は球児でもないのに坊主頭に鼻バンソーコー、チューやんは本人曰く「早めの第二次成長期」のせいで小学生に見られないほど背が高いのが特徴だ。

「何観てんのー?」
「今日のビートライダーズ。またバロンだよ。ホレ」
「おー! かっけー、カイト、マジかっけー!」
「これだから男子は」
「んだよお。バロンには女子のファンだっているぞ」
「……オラオラエイギョウモエなんだって」
「そいつ明日屋上呼び出し」

 そこでホイッスルが鳴る音が長く教室に響き渡った。
 咲たちは即座におしゃべりを止め、コーチの前に行って整列した。ホイッスルはレッスン開始の合図である。





「ワンツースリフォッ、ファイッシックスセブエイッ」

 コーチの手拍子に合わせてステップを踏みながら、一人分足りない列を咲は見つめた。

(ヘキサ、学校には来てたのに。家の用事かな?)

 ヘキサは咲のグループの4人目の女子だ。控えめで大人しい彼女はまるでお嬢様かお姫様。
 そんな彼女はセレブオーラを裏切らずそれなり家の子で、家で用事がある日はダンススクールに来ないことも珍しくない。ないのだが。

(ヘキサがいないとさびしーなあ)

 親友を自負する咲からすれば、ヘキサがいないとダンスがキレない。

「こらぁ!
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