第22話「南の島」
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ようで、目をしょぼしょぼさせている。
「えぇ、もう戻るんー?」
「そろそろ日が昇ってしまいます」
「……んー」
少しだけ考える素振りを見せて、
「わかったー」
友人達に戻る旨を伝え、部屋を出る。自分達の部屋に戻ろうと歩き出して、その歩みをピタリと止めた。
「……お嬢様?」
「ごめん、せっちゃん。忘れもんしたから先に帰っといて?」
「え……あ、はい」
刹那も眠気が限界まで来ているのだろう。仕事や戦闘の時ならともかく、今のような平常時ではさすがに彼女もただの中学生だ。目をしょぼしょぼさせてそのまま自分の部屋に歩いていった。
それを見届けた木乃香は、そのまま少し悪戯をするような顔で、コソコソと歩き始めた。
目標は視線の先。そこにあるのはタケルの姿。
相変わらずの長袖ジャージを上下に着込んでいる。普通なら部屋で寝ているはずの時間にもかかわらず、なぜか部屋から砂浜のほうに向かっていく。
少しずつ遠ざかる背中を見失わないように、そしてバレないように後ろを歩いていく。
「……どこ行くんやろ?」
その目には既に眠気はなく、楽しそうな色が浮かんでいた。
「良い朝だ」
周囲には当然、誰もいない。
騒がしい生徒達も今や部屋の中で遊びに耽っていたり寝ていたりと、中学生らしい行動にいそしんでいる頃だろう。
暗くなっていた空は少しずつ明るさを取り戻し、星と月の輝きを奪い始めていた。
何となく周囲を見渡し、誰もいないことを確認する。
「……よし」
ジャージを脱ぎ、トランクス型の半パンのような海水パンツ一丁になる。
服を脱ぎ去ったことにより、露出された肌から見えるのは傷、傷、傷……幾多の傷。ミッションの傷が残るようになって、まだ数回ほどしかミッションを行っていないのだが、それでも体中は傷だらけだった。顔に残る傷が薄いのは、もちろん、頭の致命傷は必死になって避けていると言うこともあるのが、運がいいということもあるのだろう。
自分で自分の体を見回して、そのおどろおどろしさに軽く笑ってしまう。
「……さすがに、人前では脱げないな」
あまりにも生々しすぎる。
海に飛び込み、ただ浮かんだ状態になって空を見上げる。
「……いい気持ちだ」
そんな限りなくいい気分になって海に浮かんでいるタケルを見つめる一つの影。
木乃香。
「タケル先輩、海に入りたかっただけなんかな?」
一人で呟き、目を凝らす。といっても海に浸かっていてその頭しか見えないのだが。
タケルの体に持つ生々しい傷痕は都合よく木乃香の目には映っていなかったらしい。
「……」
じっと、その動きを目で追う
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