暁 〜小説投稿サイト〜
誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
弐拾捌 最弱世代
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ーでこーたーえー」」」

是礼の他の打者と同じようにドシッと腰を据え、バットを掲げた構えはまるで山のよう。
その威圧感に、ネルフの外野がフェンスギリギリの所まで下がる。

(いきなりこの人に真っ直ぐでストライク取りにいくのは怖いな。スライダー狙いなら、ここでストライクが稼げるかも。)

真司は初球、外低めのボールゾーンにスライダーを投げた。狙われているのを承知で、ボール球で釣りにかかったのだ。
分田はゆったりと足を引き上げて球を手元まで呼び込み、スライダーに"釣られた"。

カァーーン!

思い切り踏み込んでバットを伸ばし、孤の大きなスイングで振り抜いた打球は大きな音を立てて飛んでいく。
真司はギョッとして打球の行方を見た。
打球はライト線の少し外側に落ち、ショートバウンドでフェンスに当たった。

ファウル。大きなファウルである。


(外低めの球をライトポール付近まで飛ばすなんて、何てパワーなんだ)

少しヒヤリとした真司は替えのボールを受け取りながら、大きく息をつく。

そこから二球、真司の投球はボールが続いた。
自分の球威では、分田のパワーの前に安易にストライクを投げる事はできない。その思いが指先を縛る。普段殆ど薫のミットが動く事はない真司の制球力が、この時ばかりは少し乱れる。

(ベースに近く立って踏み込んできてる。だから、外でストライクを取りにいくと、それが絶好球になる。討ち取るには、インコースで体を起こすしかない…)

真司は、自分の制球の乱れが自分のメンタルに起因している事が分かっていた。打者を怖いとは、八潮第一相手の初戦では思わなかった。今、追われる立場になって、初めて恐れを抱いていた。
そして、歩かせてもどんどん自分が苦しくなるだけだという事も分かっていた。外へ外への逃げの姿勢は、自分の首を絞めてしまう。是礼の思うツボだ。
腹を決め、覚悟を決める。

(逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…)

インコースに構えた薫のミットへ、自分に言い聞かせながら腕を振る。
山のように聳える分田の懐。バットを掲げた構えの空いた脇を、真っ直ぐで抉りこんだ。

(インコース!)

分田は咄嗟にヒジを畳んで対応した。しかし、ベース近くに立ち、アウトコースを狙って踏み込んでいるとなると、真司の130キロ前半の真っ直ぐも綺麗に捌ききるのは難しい。
さらにボールはスッと内側に食い込んでくる。
分田は苦しいスイングながら、強引にバットを振り切った。

ガン!

バットの根っこに当たった打球は、それでも三塁線を鋭いゴロになって襲う。


(止める!)

サードの敬太がまるで捕手のショートバウンド捕球のように正面に回り込み、片ヒザをついてゴロに立ち塞がった。ボール
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