焦がれる夏
弐拾捌 最弱世代
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う。プレーで引っ張れるようになったけぇな)
小柄ながらドシッと腰が据わった構えで、東雲はマウンド上の真司を睨んだ。
(ワシらも奴についてかにゃいけんじゃろ!)
真司の投球に東雲はしぶとく食らいついた。
グリップを指一本分余し、パンチショットのようなコンパクトなスイングでスライダーを打ち抜く。
カーン!
鋭いライナーがセンター前に弾み、三塁ランナーの琢磨は悠々とホームへ帰ってくる。
「よっしゃ!」
東雲は一塁ベース上で、小さくガッツポーズして笑顔を見せる。
「「「緑溢れるあずま野に
建てし我らが学び舎よ
鍛えの青春 希望に燃えて
礼の人たる誇りに生きん
ああ 是礼 是礼
我らが母校 是礼学館」」」
是礼応援席には校歌が流れ、応援団一同肩を組んで大声で歌う。
先制は許したが、是礼も負けてはいない。
4点を失った後の攻撃ですかさず、今大会目を見張る好投を続けてきた真司からいとも簡単に一点を奪いとって見せた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「スライダーを狙われてるね。」
「うん。」
一点を失ってすぐ、マウンド上の真司に薫が駆け寄る。真司の投球を初回から、ここまで捉える打線は今までの相手にはない。打ったのは全てスライダーで、浦風と東雲はまるでお手本のようなスイングで打ち返した。
「スライダーは見せ球にしよう。踏み込んできてるから、インコースも増やそうか。」
「仰せの通りに。」
真司の提案に頷いて、薫は捕手のポジションに戻る。真司はロジンバッグを握りながら、是礼ベンチに目をやった。
(狙いを徹底してくる辺りは、昨日の武蔵野に似てる。でも、今日はホームランを打てる力のあるバッターがそれをやってるんだ。個々の能力のあるバッターが、なおかつ作戦通りにしっかり動いて低い打球を打ってきてるんだ。怖さが全然違うよ。)
真司はロジンを置き、ユニフォームの裾で顔を流れる汗を拭った。
(さすが名門。強い。)
<4番ファースト分田(ぶんだ)君>
182cm93kg。少し太ましい分田がのっし、のっしと打席に入る。観客席からは歓声が上がる。昨日の準決勝は2本塁打、大会6試合で4本塁打の強打者の登場である。
「「「はるかー群馬のー田舎ーから来たー
異国ーの戦士ー ぶーんーだー」」」
応援席も分田の打席を迎え、「怪獣大戦争マーチ」を中断して分田の個人曲である「宇宙戦艦ヤマト」に切り替える。
「「「いっぱつ打つぞー 分田大輔ー
場外越えてー今ー飛びー立ーつー
かならーず 今日はー勝ってー見せるとー
手を振るー人ーにー笑顔
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