焦がれる夏
弐拾捌 最弱世代
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ーフマネージャーの魚住。マネージャー間の話し合いで、夏が終わる前から既にチーフになる事が決まっていた。主将も普通はそうなのだが、この学年に限って中途半端な候補しか居なかったため、このようの話し合いの場が持たれたのだった。
「東雲だろ」
「普通に考えて、一番実績あるしな」
真っ先に名前が上がったのは東雲。
広島の無名シニアから一般入試で入ってきたが、この夏の大会を通じてレギュラーを奪うなど、明らかに上り調子である。
少し好き嫌いの分かれる人格だが、最初に名前が挙がるのはある意味当然だった。
「いや、ワシはキャプテン向いてないけぇ。すぐ喧嘩するしのう、もっとアクが弱い奴がするんがええよ」
「じゃ、東雲。お前以外に候補は居るか?」
主将就任を避けた東雲に魚住が訊いた。
「ワシは伊吹がエエと思う。どうじゃ、アクがないじゃろ?実力もあるしのう。」
「………」
同級生の視線が琢磨に向いた。
同級生でありながら、疎遠な奴。春以降は精彩を明らかに欠いているが、一年からレギュラーの実力もある。
推薦する理由も無ければ、ダメを出す理由も見つからなかった。
「東雲」
「んー?何じゃ?」
人事が決まってからの寮部屋の引っ越しで、琢磨が東雲に話しかけた。主将と副将は相部屋で過ごす事になるのが決まりだった。
「何で俺を主将にしたんだ?」
「は?そらもう、言うた通りの理由よ」
東雲は琢磨の方を見ようともせずに、荷物の整理に明け暮れていた。
「何でだよ…お前がやるべきだろ…俺は自分のプレーで手一杯なのに…」
琢磨はストレスで頬がこけた顔を歪め、ベッドに腰掛けて頭を抱えた。
「ふざけんなよ…自分は責任から逃げやがって…」
「ほうじゃの、逃げじゃの、逃げ逃げ」
東雲は手を止めて、琢磨の方を振り返った。
「ワシは別にお前が向いとるとか1ミリたりとも思うとらんわ。でもお前は放っておきゃ、どーせ1年時から今までみたいに、俺はお前らとは違うんじゃってな態度で居るんじゃろうが。それが厄介じゃけ、お前にキャプテンやらすんじゃ。お前に引っ張って欲しいんじゃないわい、足を引っ張られとうないだけじゃ。これで分かったかバカタレが」
「……」
琢磨は言葉も出なかった。
同級生が自分をどう思ってるか、だいたい察しはついていたが、こうして面と向かって言われたのは初めてだった。
「あー、言いたい事言うてスカッとしたわ。わしゃ寝るけぇの!お前も早く荷物片しときんちゃい!」
東雲はベッドに飛び込んで寝息を立て始める。
琢磨は奥歯を噛み締め、拳を強く握りしめていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
(あん時から考えると、伊吹は実に主将らしくなったもんじゃの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ