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誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
弐拾捌 最弱世代
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ーフマネージャーの魚住。マネージャー間の話し合いで、夏が終わる前から既にチーフになる事が決まっていた。主将も普通はそうなのだが、この学年に限って中途半端な候補しか居なかったため、このようの話し合いの場が持たれたのだった。

「東雲だろ」
「普通に考えて、一番実績あるしな」

真っ先に名前が上がったのは東雲。
広島の無名シニアから一般入試で入ってきたが、この夏の大会を通じてレギュラーを奪うなど、明らかに上り調子である。
少し好き嫌いの分かれる人格だが、最初に名前が挙がるのはある意味当然だった。

「いや、ワシはキャプテン向いてないけぇ。すぐ喧嘩するしのう、もっとアクが弱い奴がするんがええよ」
「じゃ、東雲。お前以外に候補は居るか?」

主将就任を避けた東雲に魚住が訊いた。

「ワシは伊吹がエエと思う。どうじゃ、アクがないじゃろ?実力もあるしのう。」
「………」

同級生の視線が琢磨に向いた。
同級生でありながら、疎遠な奴。春以降は精彩を明らかに欠いているが、一年からレギュラーの実力もある。
推薦する理由も無ければ、ダメを出す理由も見つからなかった。





「東雲」
「んー?何じゃ?」

人事が決まってからの寮部屋の引っ越しで、琢磨が東雲に話しかけた。主将と副将は相部屋で過ごす事になるのが決まりだった。

「何で俺を主将にしたんだ?」
「は?そらもう、言うた通りの理由よ」

東雲は琢磨の方を見ようともせずに、荷物の整理に明け暮れていた。

「何でだよ…お前がやるべきだろ…俺は自分のプレーで手一杯なのに…」

琢磨はストレスで頬がこけた顔を歪め、ベッドに腰掛けて頭を抱えた。

「ふざけんなよ…自分は責任から逃げやがって…」
「ほうじゃの、逃げじゃの、逃げ逃げ」

東雲は手を止めて、琢磨の方を振り返った。

「ワシは別にお前が向いとるとか1ミリたりとも思うとらんわ。でもお前は放っておきゃ、どーせ1年時から今までみたいに、俺はお前らとは違うんじゃってな態度で居るんじゃろうが。それが厄介じゃけ、お前にキャプテンやらすんじゃ。お前に引っ張って欲しいんじゃないわい、足を引っ張られとうないだけじゃ。これで分かったかバカタレが」
「……」

琢磨は言葉も出なかった。
同級生が自分をどう思ってるか、だいたい察しはついていたが、こうして面と向かって言われたのは初めてだった。

「あー、言いたい事言うてスカッとしたわ。わしゃ寝るけぇの!お前も早く荷物片しときんちゃい!」

東雲はベッドに飛び込んで寝息を立て始める。
琢磨は奥歯を噛み締め、拳を強く握りしめていた。



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(あん時から考えると、伊吹は実に主将らしくなったもんじゃの
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