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誰が為に球は飛ぶ
焦がれる夏
弐拾捌 最弱世代
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頂面の冬月が出迎える。
冬月の前に円陣を作った選手は、その表情に恐縮し、緊張した。

「…真矢君、昨日までの我が校の平均得点は何点かね?」
「はい、6試合で9.67点です」

冬月のおもむろな問いに、スコアラーの真矢が即座に答えた。冬月はゆっくりと頷く。

「…ふむ、では、4点など大した事ないではないか。高雄、貴様何故そんな青い顔をしている?」
「申し訳ございませんでしたッ!」

高雄は深々と頭を下げて謝罪した。
冬月は「そんな言葉が欲しいのではない」とあしらう。

「失った点は帰ってこんのだ。今から我々が何をしようとも、だ。できるのは二つ。これからの守りで失点を抑える事と、こちらが点を取ること。それだけだ。」
「「ハイ!」」
「心配するな。貴様らなら4点はとれる。そういう練習をしてきた。冬場の連続ティーは例年の倍やった。点をとる作戦も立てた。恐れる事はない。行け。」
「「ハイ!」」

冬月の言葉に、是礼ナインの表情が生き返る。
一回の裏の反撃が始まった。



ーーーーーーーーーーーー



「いきなり厳しいなぁこれ」
「満塁ホームランとはなぁ」

是礼応援席ではユニフォームを着た控え部員、チアリーダー、選手の保護者、応援に駆けつけた生徒の他に、紺碧のポロシャツを着てハチマキを巻き、白の手袋をはめた集団が居た。
ベンチ外の野球部3年生によって組織される応援リーダーである。これも伝統で、かれこれ20年以上に渡ってベンチ外の3年生によって応援がリードされてきた。

「心配すんな、まだウチの打線なら何とかなる点差だって。」

今年のリーダー長を務めるのは、マネージャーの魚住洋二だ。春の大会まではスコアラーを務めていた。是礼学館のマネージャーは雑用係ではなく、アナリスト、学生コーチ、体調管理など監督のまさに右腕。そのマネージャーの代表がスコアラーとしてベンチ入りするのだが、3年生の魚住は大会一ヶ月前に真矢にスコアラーをとって代わられた。今は応援リーダーとして、声を枯らしている。データ分析に"補佐"として関わった魚住は、4点なら十分返せると見積もっていた。

「いっかーーい!"怪獣マーチ"!!」

魚住の声が応援席に響く。
是礼初回の攻撃伝統の「怪獣大戦争マーチ」が高らかに、勇ましく響き渡る。


「「(オーオーオーオー
オオオオオーオオ)
ぜいれい!かっとばせー
かっとばせー
かっとばせ!」」


チアガールが旗を振って躍動し、応援リーダーが空手の型のような動きを見せつける。
野球部員が口にメガホンを当て、揃った動きで身を反らしながら声を張り上げる。
甲子園でもお馴染みの応
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