暁 〜小説投稿サイト〜
特殊陸戦部隊長の平凡な日々
第6話:ハイジャック事件−6
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見る。

(真剣な顔・・・。 こんな近くで見るのって初めてかも・・・)

車が信号待ちで止まり、ふとゲオルグと目が合う。

「ん? 俺の顔に何かついてるか?」

「あ、え、いえ・・・」

ゲオルグから声を掛けられたティアナは、しどろもどろになりながら
真っ直ぐ前を向いて顔を赤くして俯く。

(気まずいなぁ・・・昨日スバルにあんなこと言っちゃったし)

ここまで来る途中、スバルと昨日のことについて話していたティアナは
居酒屋での会話についても大体のところを思い出していた。

(あたし、この人に恋してんのよね・・・やっぱり)

再びゲオルグの方に目を走らせるティアナ。
その横顔を見ているだけで胸は高鳴り、顔が火照ってくるのを自覚し、
ティアナは再び目線を前に戻した。

(でも、子持ちの既婚者で、奥さんにベタ惚れ。
 想いが実る可能性はぜんぜんないんだけど・・・はぁ・・・)

ティアナは心の中でそっと溜息をつく。

「着いたぞ」

ゲオルグの声でハッと我に返り、ティアナは辺りを見回す。
そこは隊舎の前の駐車場だった。

「あ、はい。 すいません」

慌てて車を降りると、隊舎に向かって歩くゲオルグを小走りで追う。

「ありがとうございました。 おかげで助かりました」

ゲオルグに追いつき、その隣を歩きながらティアナはちょこんと頭を下げる。

「別に気にしなくていいぞ、ついでだからな」

ゲオルグは肩をすくめてそう言うと、何かを思い出したかのように
ティアナの方を見る。

「そういえば、昨日の夜はどこで飲んだんだ?」

「え? クラナガンの繁華街にある居酒屋ですけど・・・」

「ふーん、じゃああれはやっぱりティアナだったのかなぁ?」

「あれってなんですか?」

ティアナが尋ねるとゲオルグは苦笑しながら答える。

「実は俺もあのあたりで飲んでたんだけど、
 道を歩いてるときにティアナに呼ばれた気がしてさ。
 でもさすがに違うかと思ってたんだけど、ティアナもあの辺にいたとなると
 ティアナ本人だったのかな、と思ってね」

ゲオルグの言葉を聞いたティアナはギクッと肩を震わせる。

(それって・・・あの"ばかやろ〜"ってやつよね・・・)

「それは私じゃないと思いますよ。
 だって、私はゲオルグさんのこと見てませんし」

ティアナの言葉は嘘ではない。
実際にティアナはゲオルグの姿を一度たりとも目にしていなかった。

ただ、ティアナの与り知らぬことではあるが、ティアナが"ばかやろ〜"と
叫んだときにゲオルグが人垣を挟んですぐ近くにいたのも事実ではある。

「だよなぁ・・・、ティアナが"バカヤロー"なんて大声で言うとは思えないし。
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