第2部:学祭1日目
第10話『岐路』
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? お姉ちゃん、こんなに一生懸命なのに」
「それは、その……」
答えられない。
「ま、あんな妹さんがいるから、愛想尽かしてるよね。それにお姉ちゃん、平沢さんと今のうちに差をつけたいと言ってたし」
「ちょ……心……!!」
歯に衣着せぬ心を、言葉はリンゴのような顔で叱る。
「もう少し、考えてみるから、じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
言葉と心は、笑顔で挨拶をして帰っていく。
約束は出来ないというのは、本当である。
唯のことも、気になっているから。
「あ……」後ろ姿の言葉に、彼は声をかけた。「もしつらくなったら、秋山さんに相談した方がいいと思うよ」
「え……?」
振り向いた彼女の表情は、怪訝。
「屋上に行った時、秋山さんと言葉、とってもいい雰囲気だったしさ」
にっこりと、誠は懸命に笑顔を作った。
が、なぜか言葉の表情が、曇り……そのまま背を向けて、歩きだした。
「やはり、容赦しないほうがいいわね……」
言葉の呟きは、彼には聞こえなかった。
「あ! 財布落としちゃった」
原巳浜駅の階段で、唯はあわてて引き返す。
「馬鹿! なにやってんだよ!!」
「もうすぐ次の電車来るぞ!!」
文句を言う律と澪を無視しながら、唯は階段を駆け降りて改札口へ向かう。
3つの自動改札の右隣に、白い改札窓があり、そこで1人の少女が駅員に、何かを手渡している。
唯はその少女に、目が止った。
「西園寺さん……あ!」
世界の手元にあるのは、まぎれもなく自分の財布。
「ちょっとそれ、私の財布!!」唯は改札口まで走って行って「ごめんなさい! その財布私のです!! ありがとうございます!!」
笑って駅員から、財布を受け取った。
「よかった」世界は安堵の表情。「ほんとに……いい笑顔してますね……平沢さん」
「ほんと! ダブルでありがとう!!」
唯の頬は、さらに緩んだ。
それを見た世界の顔が、急に沈む。
「今まで、気づかなかったなんて……私って、ばかよね」
「え……」
唯は、わけがわからない。
世界はうつむき、静かな口調で話し始めた。
「誠のことが好きで、誠と他の女の子が付き合うのを横目で見ながら、歯がゆい思いして、挙句内緒で手を出した。
貴方は、私と同じだったのに……」
「西園寺さん……」
「なのに、貴方と誠が浮気してると思いこんで、貴方をあいつに近づけないようにして、あいつの気持ちを踏みにじって……」
ぶつぶつと呟きながら、彼女は顔を上げる。
涙がにじんでいた。
「おねがい、誠のそばにいてやってください……」
「え、でも……」唯は、戸惑った。「貴方だって、マコちゃんのことが好きなんでしょ。
それに、そんなことをしたら、桂さんが……」
「そうだよ。私も、ま
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