第2部:学祭1日目
第10話『岐路』
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か世界は無言で、目をそむけている。
「マコちゃんっ!」
唯は耐え切れず、誠の目を見据えて、大声を上げた。
「……唯ちゃん……」
「私、やっぱりマコちゃんのこと、好きだから!
憂のしたことも含めて、マコちゃんに償いをしたいの……!!」
心の底から、絞り出すように言っていた。
誠は、哀しげな微笑みを浮かべ、
「償いたいのは、俺の方だよ。
親父のしようとしていることも含めて」
言葉の抱きついていない側の手を、差し伸べる。
唯はそれを、包み込むように両手で握った。
その中で、不安な表情の澪と、不満げな言葉を察知し、律はきょろきょろと目玉を動かす。
「ん? 西園寺、怒らないの?」
腕枕をしている律が、世界に問う。
「……田井中さんも、言ってたじゃないですか。望み薄だって」世界の憮然とした声。背を向ける。「私、少し街をぶらついてから帰ります」
「世界……」
誠は不安と疑問に満ちた表情。
「……もう、桂さんでも平沢さんでも誰でもいいけど、楽しんできなさいね……」
憮然とした顔、憮然とした声で、世界は誠に声をかけると、そのまま速足で去って行った。
…………。
皆、沈黙。
「世界……どうしたんだ……」
「つーかね」律がお手上げのポーズで、「なーんでお前ら、そんなに伊藤にこだわるんだよ」
「私は……」言葉は、「誠君がいないと、またひとりぼっちになってしまうんです」
「はー?」
「私、ずっとクラスで、友達いなくて、いじめられてるというか……孤立してて……」
言葉は続ける。
「でも、誠君に会えて……はじめて……1人じゃないって、こんなにいいことなんだって、嬉しいことなんだって、教えてもらえた気がするんです」
「1人、か……」
つぶやく澪。
「誠君といると、ドキドキするんですけど……それだけじゃなくて、嬉しいというか……温かい気持ちになるんです。
もし、誠君に嫌われたりしたら……また、元のさびしい私に戻っちゃう。ううん、もっとですよね」
「……」
皆、視線を言葉に集中させる。
「2人でいることの楽しさを知っちゃったから、もし1人になったら、きっと……もっとつらいです。
つらくて、きっと死んじゃうかもしれないです……。
私にとって、誠君は自分の命と同じくらい大切な存在です……」
「言葉……」
複雑な思いで、誠は言葉のうつむいた視線を見る。
「私は……いや、私達は、桂の友達だよ」
澪が、不安と微笑みが半々の表情で、でも言葉の目をまっすぐ見て、答えた。
「秋山さん……」
「唯だって、伊藤のことで妥協できないだけで、貴方に悪い感情を持ってるわけじゃないし」
「……」
「でなければあの時、貴方のために泣くことはなかっただろう」
「……」
唯も、思い出していた。
あ
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