第2部:学祭1日目
第10話『岐路』
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「止は浮気性なうえに、相手を妊娠させることに異様な執着を抱いているから……」
皆、どん引き。
母もさすがに、顔を赤らめているようだ。
「オイオイ、んなヤリチンに、あんたもなぜ引っかかったんすかねえ」
腕枕をしながら、律は呆れた表情で問いかける。
母は苦笑いしながら、
「誰にでもあるでしょう? 不良が雨の中子犬を拾ってるのを見て、惹かれるパターンは」
「私も……小さいころあった気がする」
唯は、思わず遠い目をしてしまう。
「おいおい……唯まで同調すんなよ。まあプロセスはおいといて、私たちが唯を守るつもりだからさ。警察にも言っておこうかねえ」
「……無理」きっぱりとした母の答え。「あの男には、警察にコネがあるし」
「うわっちゃー……」
こめかみを押さえながら、ぼやく律。
「まさか……!」
小声だが世界の声がしたので、唯はちらりと見る。
世界は、何かを思い出したらしく、目をぐっと見開いていた。
「……西園寺さん……?」
唯は、気になった。
目薬をさして平静を装い、誠は唯達を送ることにした。
食事を終えて、放課後ティータイムと憂・世界は、外の入口近くまで行く。
誠と母、それに言葉と心が、それを見送る形である。
「ほんと、ご馳走様でした」
澪が誠に、声をかけた。
「いやいや……不快な思いをさせて、申し訳なかったです……」
誠はにこっと笑う。
「ううん、こちらこそ、憂にまでご馳走してくれて、ありがとう。ほら、憂も頭下げて」
包丁はユニパックに入れたまま、唯が回収し、持ち帰ることにしていた。
憂は姉の隣で、頭を下げさせられ、
「……ゴチソウサマデシタ……」
多少棒読みに、言う。
「心こもってないなあ」
ごねる唯の携帯から、メールの着信音が流れる。メッセージを見てみる。
「唯ちゃん?」
「お父さんからだよ。『今日は早めに帰るから、ご飯一緒に食べよう』だって」
「唯の両親は、ラブラブ夫婦だもんな」
律の話を聞いて、胸がチクリと痛んだが、誠は、
「いいお父さんだね」
と、無理に笑顔を作る。
「普通だよ」
唯はにっこりと答え、父親にメールをする。
部長の律が前に進み出て、
「唯のことは気にすんな。あたしらであの止って野郎から、唯を守るからさ。それと、澪、桂」
「ん?」「はい?」
「お前達はずっと家にいたほうがいいかもしれない。すでに甘露寺たちから目えつけられてるみてえだし」
「ごめんなさい……」
冷静な表情の律の隣で、世界は頭を下げた。
「私は嫌です!」言葉は首を横に振り、「私は……誠君と一緒に、いたいですから!」
「言葉……」
唯と世界の目の前で、誠の腕に抱きつく。
「ちょ……桂さん……!」
不快に言う唯だが、何故
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ