第2部:学祭1日目
第10話『岐路』
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なさいね」
誠の母は、落ち着いた声で言う。
「そう言えば貴方達は、どうしてうちに来たの?」
「「あの「ですね」、実はこの憂「さん」が……」」
言葉と唯の声が重なった。
誠はそれを抑えて、端的にこう答える。
「今日の学祭の時、いろいろあって、桜ケ丘軽音部の人たちと仲良くなってね、皆で食事を取ろうということになったんだ」
「そうなの」母は半信半疑の状態になりつつも、唯の方を向いて、「ああ、貴方が誠の言ってた、平沢さんね」
「え……? なんで分かるんですか……?」
「驚かなくてもいいじゃない。ぽーっとしてる感じで分かるわよ。成程、誠が特別な思いを抱いてるというわけね」
「い、いや、そういうわけじゃないよ、母さん……」
顔を赤らめて誤魔化す誠。
「ただの友達です」
ぶっきらぼうに答える言葉。
2人を見て、母はくすくすと笑った。
すると誠の携帯から、音のしない振動。
「ちょっと電話みたいなんで、行ってきますね」
「あ、ちょっと……」
自分の部屋に行く誠を、澪は気になるといった表情で、見ていた。
小ぢんまりとしているが、整理整頓されている自分の部屋。
青いベッドに座り、誠は携帯の通話ボタンを押す。
「はい、伊藤ですけど」
「あ、誠。俺だ。泰介だ!! 実は大変なんだよ!!」
親友の、いつものハイテンションな声である。
「……大変って何だ? ガチャガチャでベジータのフィギュアが当たったなんて言わせないぞ」
「馬鹿、ドラゴンボールの話じゃない!! まあ、うちにハチャメチャが押し寄せてきてるのは確かなんだけど」
「それはこっちもだよ。大体お前はたいていのことにはHEAD-CHA-LAって言ってなかったか?」
「それがそうはいかんのよ。実は放課後ティータイムのさわ子先生を、うちに連れてきてしまったんだ!!」
「ええっ!?」思わず面喰ってしまった。「ど、どうして……?」
「さあ……」電話の奥の声が、自信なさげになる。「喫茶店の掃除を終えて廊下に出たら、さわちゃんがふらふらしながらやってきたんだよ。なんだか服が乱れてたから、アレの後なんだとは思うけれど」
「……なるほど」誠は苦笑いしながら、「見事、弱みに付け込んでお持ち帰り、といったところか。でもよかったじゃねえか。大好きなさわちゃんを手に入れることができてさ」
「よくねえよ……。今は姉ちゃんに取られて、どうする事も出来ねえし」
「シスコンだしなお前は。ドジータのフィギュアも、全部取られてもどうすることもできなかったって言ってたしな」
冗談半分に言って、自分の気持ちを和ませる。
「冷やかすなよお……」
「あははは……」
「まあ、さわちゃんの奴、『止さん、よすぎる』って呟いてばっかりなんだけどよ……」
穏やかになりかけた誠だった
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