第2部:学祭1日目
第10話『岐路』
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る誠と、はぐらかす止。
しばらく、沈黙。
その中で誠の母は、息子の目の変わりようを冷徹に見ていた。
(あの子……)
「唯、どうした!?」
律・澪・世界・言葉・憂・いたるが玄関にやってきた。
「! おとーさん……!!」
いたるの顔が、恐怖と嫌悪の表情に変わった。
「いたる、迎えに来てやったぞ」
いやがるいたるの手をぐいと引っ張り、止は自分の隣に引き寄せる。
「いたる……」
思わず誠は、いたるを気にして唯から離れてしまう。
唯はふと、慣れない感触にぞくっとなった。
「あ……」
止の手が、唯の太ももをさすっている。
「く、貴方……!!」
憂が出るより早く、誠が止の手を弾き飛ばす。
「手を出すんじゃないよ……!!」
彼の声は、自分でも信じられないぐらい、荒い。
鋭い目から出る威圧が周りに広がる……。
逃げ出そうとする澪を、律は驚愕と焦燥の表情のまま抑えた。
止は、誠の手を乱暴に払いのけ、
「いつまでそんなことを言ってられるかな?」
嫌がるいたるの手を引いて、さっさと踵を返す。
一瞬、その濁った目が、ちらりと唯を見た。
それを感じ取り、誠は唯を守るように、さらに体を密着させる。
それに気づいたときには、唯の鼓動はトクトクと速くなっていた。
さりげなく、彼の腕に自分の腕を回す。
ぬくもりが自分に、伝わってくる。
それに気を取られ、言葉の嫉妬でいっぱいの眼光も、世界の悲しげな表情にも、気づかなかった。
もちろん、「おにーちゃんと、はなれたくないー!」という、いたるの泣き声にも。
皆皆気を取り直し、明かりがぼんやりとともるリビングで、手前勝手に座る。
「何、あの人……?」つややかな檜のテーブルに座った唯は、さっぱり状況が分からない。「マコちゃんの知り合い……?」
「沢越止。私の元夫」
唯の斜向かいに座った誠の母は、冷めた声でため息をついた。
「止……?」
ソファーに座った世界がふと、思案顔になる。
「おばさんの旦那さんってことは……」
「伊藤の親父さんか……」
「はい……」唯の隣にいる誠の表情は、暗い。「でも浮気症で、しかもやたら外で子供を作ることに熱心で……。ほとんどごろつき同然ですよ」
ぎろっとソファーから、梓の冷たい視線。
二股も三股もかけたあんたが言うな、という目つきである。
「私も口説かれて、ついつい結婚しちゃったけど……あんな人とは思わなかった」
乾いた目で、天井を見上げる母。
「まあよ」立っている律が間に入り、「唯を変な目で見てやがったけど、唯がひとりっきりじゃなくて良かったぜ。持つべきものはダチだよな」
「自分で言うか」隣で澪は呆れて、「まあ、とりあえず良かったですよ」
「そうね。不快な思いをさせて、ごめん
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