第五十三話 忠告は遅かった
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かな、ミューゼル少将」
多少の睨みあいと嫌味の応酬を交わした後、自治領主府を後にして高等弁務官府に戻った。アルバート・ベネディクトを殺したのは誰か? ケッセルリンクの言葉が事実なら帝国という可能性も有る。俺が指示を出していない以上、命じたのはオーディンのあの男だろう。あの男ならやりかねない。
しかし俺の指摘した可能性も有るはずだ。ケッセルリンクは補佐官であって自治領主では無い。ルビンスキーが全ての秘密をケッセルリンクと共有しているとも思えない。そういう意味では腹立たしい事だが俺もケッセルリンクも帝国とフェザーンの駒の一つでしかない。
部下達にベネディクトの爆殺の事実確認を命じてからオーディンに通信を入れた。直ぐにあの男がスクリーンに映った。この男が姉上に護衛を付けていれば姉上は死なずに済んだはずだ。最初に報せてきた時は気が付けば罵声を浴びせていた。上官に対する対応では無かっただろう。
しかしこの男は何も言わなかった。黙って聞いていただけだ。何故、この男は何も言わないのか? いや何故この男は必ず自分で連絡を入れるのか? 嫌な仕事なら部下に押し付けても良さそうなものだが……、まさかとは思うが俺の反応を楽しんでいる?
『どうかしましたか?』
「アルバート・ベネディクトが死にました」
俺の言葉に最高司令官は僅かに考える様なそぶりを見せた。驚いた様子は無い、それを見ればスクリーンに映るこの男が暗殺の指示を出したようにも思える。もっとも俺はこの男が驚いた所を見た事が無い。また思った、一体誰がベネディクトを殺したのか……。
『自然死ですか?』
「いえ、爆殺です。地上車ごと爆破されたそうです」
『……間違い有りませんか?』
「?」
『地上車に乗っていたのはアルバート・ベネディクト本人だったのかと訊いています』
なるほど、身代りという可能性も有るか。
「小官もケッセルリンク補佐官から聞いただけで見たわけではありません。現在、事実確認をさせています」
『なるほど』
相手が頷いた。
『事実なら口封じ、という事ですね』
「ケッセルリンク補佐官はフェザーンでは無いと言っていました。むしろ帝国ではないかと疑っておりましたが……」
俺が探りを入れると最高司令官が笑みを浮かべた。
『自分が殺したなどと素直に認める人間がいるとも思えませんが』
確かにそうだ。もう一歩踏み込んでみるか。
「閣下は何者の仕業と思われますか?」
『さて、フェザーンか、帝国か、或いはそれ以外か、何とも言えませんね』
ヴァレンシュタイン最高司令官は帝国を外さなかった。自分が手を下した可能性を否定していない……。
「それ以外、と言いますと?」
『例えば商売敵やフェザーンに居る門閥貴族の遺族が考えられます。エルフリーデ・フォン・コー
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