第八十八話
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第八十八話 テルミン
使い魔達は先生に見つかってあれこれ言われない様に着ている上着のパーカーの中に隠した、そのうえでだった。
亜美は音楽の先生に音楽室に来てもらってその奇妙な、アンテナのあるその楽器を先生に見せて尋ねた。
「あの、これ楽器ですのん?」
「それはテルミンよ」
先生は亜美にすぐに答えた。
「テルミンっていう楽器なのよ、それはね」
「この楽器テルミンっていうんですか」
「そうなの、面白い形をしてるでしょ」
「正直楽器に思えませんでした」
亜美は関西弁で本当に素直に答えた。
「何やろって」
「そうよね、先生も最初見た時昔のSF映画に出て来る宇宙人が使っているハイテクというか怪しい機械かって思ったわ」
音楽の先生は若い女の眼鏡をかけた先生だ、その先生のことがである。
「こんなのどうして使うのかって」
「これどう使うんですか?」
「手を上に置いて、上下にふわふわと指を動かしながら使うのよ」
先生は亜美にテルミンの使い方も教えた。
「シンセサイザーの元になったって言われてもいる楽器なの」
「へえ、凄い楽器なんですね」
「昔のロシア、ソ連で作られた楽器でね」
先生はテルミンを作った国のことも話した。
「今もロシアでは使ってるわよ」
「そうなんですか」
「そう、使い方が難しいし独特の音が出るけれど」
先生はさらに話す。
「面白い楽器よ」
「ほなうちがやってみても?」
「使ってみる?」
「ちょっとやってみます」
実際にこう願い出た亜美だった、そして。
そのテルミンで演奏をしてみた。すると。
実に不思議な音だった、本当に昔のSF映画の効果音か宇宙船の中で聴こえて来る音の様だ。その音を自分でも聴いてだった。
亜美は微妙な顔になってそのうえで先生にこう言った。
「ほんま不思議な音ですね」
「そうでしょ、本当に独特の楽器だから」
「ちょっと忘れられへんです」
「そう言うと思ったわ、ただ使い方が難しいから」
「バンドには無理と思います」
「ええ、バンド向きじゃないわ」
実際にそうだと答える先生だった。
「これはね」
「そうですよね、おもろいですけど」
「余興とかに使うといいわ」
「わかりました、ほな」
亜美は先生の言葉に頷く、そうしてだった。
「他の楽器も見てみます」
「ええ、色々な楽器があるから見てね」
先生は亜美がもうクラウンに入っていることは知らない、しかし生徒の探究心を歓迎して亜美の言葉を笑顔で受け入れて彼女を見守るのだった。亜美は自分に向いている楽器を探すことを再開した。
第八十八話 完
2013・12・5
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