Development
第二十三話 Boy meets boy(?)
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れた紫音という女性の存在は、彼にとってマヒされた感覚を揺り動かすには十分だった。
それも当然だろう。何故ならこの学園の『紫音』という女性は『紫苑』という男性が作り上げた理想の女性像によって演じられている存在なのだから。
「……はぁ、なんていうか綺麗な人だったなぁ」
とはいえ、やはり彼はただの朴念仁だったようだ。それが目の前の不機嫌な幼馴染をさらに不機嫌にするとも知らず、ただ思ったままを口にする。
「お前という奴は……!」
「な、なんで怒るんだよ。ただ気になっただけだよ、クラスや周りにああいう人がいないからさ。なんていうか大人っぽいっていうか同い年に思えないし」
そう、彼は知らなかった。紫音が留年をしているため、自身より年上であるという事実を。代表候補生の意味すらしらない彼が、そこまで情報に通じている訳がないのは当然だ。
「はぁ……全く。あの人は留年しているからお前の感じた通り年上だぞ。覚えていないか? 去年、西園寺グループの研究所がテロリストに襲撃されただろう、あのときの被害者である西園寺の令嬢だ」
「へぇ……って、えぇ!?」
いくら情報に疎い一夏でも、去年の事件のことは知っていた。ISにより一気に軍事化が進んだとはいえ、まだまだ平和な日本で起きたテロ事件は衝撃的だった。
それだけ有名な出来事だったら、この学園に入学するものなら知っていてしかるべきだろう、実際一夏以外の生徒は全員知っている。だからこそ、紫音は自分から何も言わなかった。……そもそも自身の紹介に留年していることなどあまり言いたくはないだろう。
にも関わらず、一夏は同学年と知るや馴れ馴れしく話してしまった。ただでさえ自身の最初の言動を後悔していたのにさらに上塗りである。話を聞かせてくれと言ったものの、どの面さげて会えばいいのか。
千冬のこと、箒のこと、聞きたいことは山ほどあるのにもう一度会うのが躊躇われるほどの失態に気づき、一夏は頭を抱える。
ある程度の情報を持ち、お互いの心の準備を経たうえで落ち着いて出会うことができればあるいはお互いにとって有益な関係になり得たかもしれない。
しかし、今の一夏にとって紫音という存在は、断片的に得てしまった中途半端な情報と自身の失態が気軽に会うことを困難にしていた。
やはり、この出会いは一夏にとっても不幸な形だったのだ。
◇
……知らず知らずのうちに僕もストレスが溜まっていたようだ。思わず簪さんをからかうような行動にでちゃったけど、いい方に転んでよかった。怪我の功名というべきか。もし、これが原因でより一層嫌われてたら目も当てられなかった。というより、嫌われる可能性のほうがふつう高いんじゃないかな?
でも、今朝も一応は挨拶を交わすことはできたし少しずつでも
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