第百四十八話 伊勢長島攻めその十三
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「わかったな」
「はい、それでは」
「すぐに」
「そうじゃ、折角今日のうちに出られたのだからな」
発つのは早かった、それでだというのだ。
「早いうちに行くぞ」
「近江にですな」
「与三殿のところに」
「そうじゃ、向かう」
そうしてだというのだ。
「与三を助けるぞ」
「確かに。この道ならばです」
竹中もここで言う。
「近江まですぐです」
「そうじゃな」
「そしてすぐに与三殿のところに着けます」
それもまた早いというのだ。
「ですからこの道を使うのはいいかと」
「そういうことじゃな」
「はい、では急ぎましょう」
竹中もこう言う、そしてだった。
織田家の軍勢は一路近江に向かうのだった、信長はその時に彼のところに文を送るのも忘れなかった。これは馬上で素早く書いた。
それを送る時にだ。信長は文を渡す者に話した。
「よいか」
「はい」
「必ず届けるのじゃ」
「与三殿にですな」
「違う、猿夜叉にじゃ」
長政にだというのだ。
「もう来ている頃じゃからな」
「だからですか」
「そうじゃ、小谷城に向かえ」
向かうのはその城だというのだ。
「わかったな」
「畏まりました、それでは」
「若しわしが間に合わずとも」
それでもだとだ、信長は強い声で言う。
「あ奴がおる」
「猿夜叉殿ですな」
「あ奴がおればな」
その時はだというのだ。
「何とかなるわ」
「はい、それでは」
使者も応えてそうしてだった、彼等はというと。
そのうえでだ、彼はすぐに小谷城に向かうのだった。
その小谷城ではだ、今丁度長政が戻ってきたところだった。彼は既に髪が戻っていた。そのうえで市と会っていた。
笑顔でだ、市の顔を見て言う言葉は。
「戻って来たぞ」
「よくぞお帰りに」
「うむ、皆元気そうで何よりじゃ」
市だけでなく息子である万福丸、そして茶々達三人の娘達も見る。皆前に最後に会った時と変わっていない。
いや、皆大きくなっている。成長していた、長政はそのことを見てさらに笑顔で言うのだった。
「しかも大きくなったな」
「はい、まことに」
市が笑顔で応える。
「皆殿のお帰りを待っていました」
「そうか、しかしじゃ」
ここでだ、長政は表情を変えた。
そのうえでだ、こう言うのだった。
「わしはすぐにな」
「ご出陣ですか」
「すぐに出る」
そしてだというのだ。
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