第百四十八話 伊勢長島攻めその十二
[8]前話 [2]次話
「そうなればな」
「だから朝からはじめさせましたか」
しかも早朝にだ。
「城を焼け落ちると共に」
「うむ、向かう」
そうするというのだ。
「近江にな」
「では」
「しかし降らなかったのう」
信長は燃え続ける城を見ながら残念そうに呟いた。
「結局は」
「ですな、ですからこうして」
「これではまるでじゃ」
「まるでとは」
「時間稼ぎじゃ」
こう言うのだった、ここで。
「どうもな」
「確かに、言われてみれば」
「そう思うな、爺も」
「はい、これでは」
平手も信長に己が思ったkぽとを述べた。
「そうとしか思えませぬ」
「そうじゃな、ここに足止めをしてな」
「近江に行かせるのを遅れさせますか」
「近江が遅れてはじゃ」
そこから先も見ていた、信長は。
「摂津や越前にも関わるからな」
「どちらに行くにしてもですな」
「近江で遅れてはどうにもならん」
近江は摂津にも越前にも行ける要地だ、それ故にこの国で何かあってはならないというのである。
それでだ、こう言うのだ。
「しかし」
「しかしですな」
「近江に急ぐ」
まさにだというのだ。
「城が焼け落ちるのを見ればな」
「すぐにですな」
「急ぐぞ」
また言う信長だった。
「すぐにな」
「はい、それでは」
こう話してそしてだった、信長は今は焼け落ちる城を見据えていた。彼への怨嗟の声は今も響いていた。
やがて門も櫓も焼け落ちた、そして遂に声が聞こえなくなった時にだった。
信長は左右の小姓達にこう告げた。
「握り飯はあるか」
「はい、こちらに」
「ここに」
すぐにその握り飯達が持って来られた、草の上に三個置かれている。
信長はその握り飯を自分の手で掴み瞬く間に食ってからだ、周りにも告げた。
「皆も食え」
「そしてですか」
「今すぐに」
「城は焼け落ちた」
だからこそだというのだ。
「よいな、それではじゃ」
「はい、今より」
「近江に」
こう話してすぐにだった、彼等は。
近江に発つ、長島には信興と三万の兵が後始末として置かれ信長はすぐに主力を率いて近江に向かった。
その道もだ、信長は言った。
「伊賀からじゃ」
「そこからですな」
「近江まで」
「そうじゃ、すぐに向かう」
伊賀からの方が近い、それで伊賀の道を使うというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ