第百四十八話 伊勢長島攻めその十
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「ですから今はこうして」
「水ですか」
「それがしはそれで充分です」
「ではです」
ここで細川は笑ってこれを勧めた。
「水に少しだけ酒を入れて」
「そうして飲めばですか」
「はい、これならどうでしょうか」
勧めるのは所謂水割りだった。
「それはどうでしょうか」
「ですな、それでは」
明智も応える、そうしてだった。
実際に水に少しだけ酒を入れた。澄んだ水の中に白く濁った酒が入りそれを飲んでから細川にこう言った。
「これならそれがしにも」
「飲めますな」
「はい、これでは」
飲めるというのだ。
「酒も多少は」
「こうした工夫もありますので」
「料理にはですな」
「はい、料理のことならお任せ下さい」
細川は風流人だ、その為料理についても造詣が深いのだ。その見事さは都でもよく知られている。
そしてその料理の腕からだ、明智に話したのである。
「酒の飲み方にしても」
「こうしたものがありますか」
「はい、それでは」
こう話してそしてだった、、明智はその水割りの酒を飲むのだった。これならば酒に弱い彼でも酒を飲めた。
そしてだ、飲み肴の梅干を食べながら言うのだった。
「さて、朝までに降ればよく」
「若しそうしなければ」
「火攻めです」
長島には暫く雨が降っていない、それで空気も乾いておりしかも風が強い。しかも長島城は中に人が多い。まさにだ。
「火を点ければ一瞬です」
「それで燃え盛り」
「さながら檜が燃える様に」
まさに火の木というそれの様にというのだ。
「城は全てが瞬く間に燃えるでしょう」
「しかも当家は火薬も多いですからな」
鉄砲に使うそれだ、特に忍と鉄砲を使うことを得手とする滝川の隊が多く持っている。
それでだ、火を点ければ一瞬でなのだ。
「城はあっという間です」
「普通に攻めれば数日かかりますが」
「火を使えば」
まさに一瞬だ、おそらく昼までにはというのだ。
「城は紅蓮の炎に包まれるでしょう」
「二万の門徒達は丸焼きですな」
「まさに」
そうなるというのだ。
「それしかありませぬ
「そしてそのうえで、ですな」
「近江に向かうだけです」
長島城が陥ちればもう長島に長居をする必要はない、後始末の者達を残して主力はというのだ。
「そうなります」
「ですな、では」
「降ればそれでよしとしまして」
明智はこのことを強く願っていた、無論細川もだ。
「このままでは」
「ですな」
「火は覚悟しなければ」
どうしてもだとだ、彼等も覚悟していた。
そしてその中で夜を過ごした、当然番の者以外は眠った。
朝起きても城は相変わらずだった、それでだった。
信長は家臣達にだ、こう告げた。
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