第五十一話 オペラ座の怪人その六
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「この学園って何でもあるけれど」
「物凄く大きな学園で八条グループが経営しているけれどね」
八条グループといえば世界屈指の大グループだ、それこそ並の国家一つに匹敵する程までに巨大な資産を誇る。だからこの学園の規模も巨大なのだ。
しかしだ、それでもだった。
「そんな大それた劇場があるなんて」
「ちょっと以上に凄いことよね」
「まあ劇場ってのはそれだけのものなんだろうね」
口裂け女が二人にこう話す。
「やっぱり」
「ううん、じゃあ演劇ってやっぱり芸術なんじゃ」
「だからここまでお金をかけてるんじゃ」
「いや、昔は王様とかお貴族さんの遊びだったからね」
それだったというのだ、演劇は。
「人間遊びにはお金かけるよね」
「じゃあウィーンのあれも遊びだったの?」
「そうだと思うよ、音楽もね」
それ自体もだというのだ、口裂け女は聖花に返した。
「娯楽なんだよ」
「そうなのね」
「芸術とかじゃなくて」
「芸術かも知れないけれど娯楽なんだよ」
口裂け女は二人に話す、そうして。
そのうえでだ、今一緒にいる面々にあらためて言うのだった。
「まあとにかく中に入ってね」
「観劇ね」
「それね」
「まずは観てね」
そすいてだというのだ。
「オペラ座の怪人と泉のこともね」
「ええ、そのこともね」
「中で」
二人も口裂け女に応えてそうしてだった。
五人で劇場の中に入った、そうして。
豪奢なロビーの中を通り過ぎた、ロビーは見事な椅子が幾つも置かれている喫茶店になっているがその中を観ると。
様々な妖怪や幽霊達がいる、日下部やドラキュラや雪女達もだ。
その彼等を観てだ、愛実は聖花に言った。
「何か色々な人達がいるわね」
「日下部さんもね」
聖花も愛実も日下部達に頭を下げる、すると彼等はすぐにそれぞれの挨拶をしてきた。そのうえでだった。
二人はロビーの中を進む、そして言うのだった。
「ううん、今日は色々な人がいるわね」
「そうよね」
「何か豪華っていうかね」
「そんな気分よね」
「演劇は皆好きだからね」
口裂け女は目を細めさせてその二人に言う。
「だから集まるんだよ」
「そうなのね」
「だから幽霊さんも妖怪さんも集まってるのね」
「それでなのね」
「皆いるのね」
「そうだよ、茉莉也ちゃんは今はいないけれどね」
彼女の姿は見えない、それはどうしてかというと。
「今頃彼氏と飲んでるわよ」
「飲むだけで済めばいいけれどね」
「あの人のことを考えると」
二人は茉莉也の酒癖の悪さから彼女の婚約者のことを心配した、そのことを考えるとどうしてもだった。
「けれど先輩はおられないのね」
「あの人はお酒を楽しんでおられるのね」
「そうよ、演劇に来る時もあるけれど」
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