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八条学園怪異譚
第五十一話 オペラ座の怪人その五
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「ちょっとね」
「あまりにも」
「確かに綺麗で観るべきものがあるけれど」
「哲学とか宇宙ってね」
「そこまで凄い?」
「演劇を素直に楽しめないでしょ、そこまでだと」
 こう言うのだった、愛実と聖花の言うことは妖怪達にしてみれば大袈裟と言ってもいい様なものに思えるのだ。
 それで口裂け女もだ、首を少し左に捻って言った。
「そこまで思うことないよ」
「普通に楽しめばいいっていうの?」
「そうなのね」
「そうだよ、肩肘張ることはないんだよ」
 口裂け女は首を戻して目を細めさせて二人に話す。
「楽に観ればいいんだよ、能に限らずね」
「他の演劇もなの」
「そうなのね」
「そうだよ、歌舞伎でも狂言でもね」
 日本の演劇からだった、話は。
「ミュージカルでもオペラでも京劇でもね」
「何でもなの」
「芸術と思わずになの」
「堅苦しいものに思わないで素直に楽しめばいいのね」
「そうなのね」
「そうだよ、普通にね」
 観て楽しめばいいというのだ。
「酒でも飲みながらね」
「今日は焼酎用意してるからね」
「あとおつまみで枝豆ね」
 花子さんとテケテケは酒瓶と枝豆がわんさと入ったザルをそれぞれ出して言う。
「飲んで食べながらね」
「それで楽しもうね」
「ううん、芸術じゃなくて娯楽?」
「殆どそれよね
「そうだよ、演劇は娯楽だよ」
 またこうしたことを言う口裂け女だった。
「というか映画と一緒だよ」
「飲んで食べながら観て楽しむの」
「そういうものなのね」
「そうだよ」
 まさにそうだとだ、口裂け女はまた言ってだった。
 そのうえでだ、三人の妖怪達はあらためて二人に言った。
「じゃあ行こうね」
「今からね」
「わかったわ、それじゃあね」
「一緒にね」
 二人も妖怪達に応える、こうしてだった。
 一行は大学にある劇場に向かった、外観はさながら欧州の歌劇場だ。白亜の宮殿を思わせる重厚なものである。
 その外装、ギリシア風の柱さえ観て愛実は目を瞬かせて言った。
「ううん、お金かなりかかってそうね」
「もう宮殿よね」
 聖花もその宮殿を観て言う。
「ここって」
「そう見えるわよね」
「ここ中も凄いからね」
「そのまま欧州の歌劇場だからね」
「ここはあれなんだよ」
 口裂け女が二人に言う、劇場の前でも。
「オーストリアかオーストラリアの何処かね」
「ああ、ウィーン国立歌劇場ね」
 聖花がすぐに口裂け女の言葉に答えた。
「あの歌劇場ね」
「おっと、オーストリアだったかい」
「ええ、オーストリアっていうと音楽だし」
「その歌劇場なんだね」
「それをイメージして造った場所なのね」
「そうみたいだね、だから相当お金がかかってるよ」
「よくそんなの大学にあるわね」
 愛実
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