第五十一話 オペラ座の怪人その四
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「何ていうかね」
「そうよね、どうもね」
「不思議よね」
「ええ、とにかくね」
「劇場ね」
「そこにも怪談があるのね」
二人はこのことを確認した、そうしてだった。
その夜のうちに劇場に行くことにした。今回は二人だけで行こうと思ったが校門の前に来るとそこにもういた。
口裂け女だ、妖怪は二人の姿を認めると左手を振って明るく挨拶をしてきた。
「こんばんは」
「あれっ、口裂け女さん?」
「今は夕方じゃないのに」
「あんた達今夜は劇場に行くのよね」
口裂け女は少し驚いている二人に目を笑みにさせて応えてきた。口元はいつも通りマスクで隠している。
「そうよね」
「うん、そのつもりだけれど」
「それで来たんだけれど」
「あたし達丁度今晩観に行こうって思ってたのよ」
「今晩?」
「しかもあたし達って」
「そうだよ、ほら」
口裂け女の左右に出て来た、見ればいつもの面子だ。
花子さんにテケテケだ、トリオだった。
その二人もだ、愛実と聖花に言ってくる。
「実は今夜劇場で舞台があるのよ」
「それで観に行くつもりだったのよ」
「妖怪仲間での舞台がね」
「それであんた達も来るっていうから」
「それでなのよ」
口裂け女も二人に言って来た。
「あんた達と一緒に行こうって思ってね」
「ここで待ってたの」
「私達を」
「そうなのよ、一緒に行く?」
口裂け女は二人にあらためて誘いをかけてきた。
「今から」
「というか今晩舞台があるの」
「そうなのね」
「ああ、能がね」
あるのはそれだった、室町時代からある日本の伝統的な舞台だ。
「あるからね」
「能、ねえ」
「また高尚ね」
「別に高尚でもないでしょ」
テケテケが二人に車椅子の席から返した。
「別に」
「そう?能っていったらね」
「高尚よね」
「というか高尚とか思ったらね」
「駄目なの?」
「そうなの?」
「堅苦しくてね」
それでだというのだ。
「楽しめないじゃない」
「ううん、けれど能っていうとね」
「やっぱりね」
「あんた達から見れば能って芸術なのね」
「ええ、完全にね」
「それになるわ」
二人はテケテケに自分達の能について思っていることをそのまま話した、彼女達にとって能はそれに他ならないのだ。
「物凄く高尚なね」
「哲学というか宇宙もその中にある」
「能ってそこまで凄いもの?」
「何かスケールが大き過ぎない?」
花子さんとテケテケはその話を聞いて首を傾げさせてお互いに話した。
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