参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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、見えたと思ったら、あたしはいきなり落ちた。多分、落ちた、んだと思う。ざばんという音を遠くで聞いた。
『・・・うごけるなんて・・・』
何が何だかわからず、うねる透明の向こうに、青く燐光するあたしの手と、険しく歪められた女童の顔が、ゆらりと揺れて、さっと流された。・・・いや、違う!流されているのはあたしの方だ!
息ができないと気づいて、あたしは夢中で手を掻いた。水。流れがある。川!?一体何で・・・。いや、それよりも、空気!
あたしはざばんと水面から顔を出したけれども、折悪く水をたんまり飲みこんで、おまけに腰まである髪がなにかに引っかかったのかがくんとあたしの頭を引っ張り、碌に呼吸もできないまま水中に逆戻りした。
岸・・・岸はどっち!?
わ・・・っかんないよー!ばかー!
『おとしちゃった』
酷く醒めた声がした。苦しくて苦しくて耳鳴りもしてくるほどの辛さなのに、その声だけは鮮明に聞こえる。
夢?幻聴?ああもう、どっちでもいい、苦しい!
『かーくれんぼしましょ?』
ぐるりとまわる。あたしがまわる。声がまわる。ぐるぐるとまわる。
意識が途切れる寸前、力強い腕があたしの腕を引いた、気がした。
ぱたり、と落ちる。
ぱたりぱたりと、雫が頬を通って流れ落ちている。
あたしはぼんやりと薄目を開けた。
何も見えない。
でも、自分がゆらゆらと揺れている気がする。
あー・・・。
寒・・・。
・・・。
ゆうらりゆらりと、揺れながら、あたしはまた目を閉じる。
あー・・・そっかぁ・・・あたしまた高彬に助けて貰ったのかぁ。
自然とあたしはそう思った。
ごめんね高彬。また迷惑かけて。あたしほんとに迷惑かけてばっかだよね。自分がホント嫌んなる。
でもありがとう高彬。
本当に・・・。
「ん?起きたァか」
うん、起きたよ。でも眠いの。なんだか凄く。喋るために口を動かすのも億劫なほど。
なんでかなぁ・・・。
もう一度、うっすらと瞼を持ち上げて視線を動かしたあたしの目に飛び込んできたのは、見るものを圧倒するほどそれはそれは見事に咲き誇る桜だった。
「・・・」
その姿を瞳の中に焼き付けたまま、あたしは今度こそ力を抜いた。
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