参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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『おまえ、なにをもっている?』
暗い意識の中、ぱたりと波紋を広げるように声は落ちる。
『わたしがかなわないぐらいとてもつよいちから・・・。おかげで、ころせなかった』
憎々しげに言った後、一転してぱっと明るく声音が替わる。
『でも、ねぇ。わたし、おもったの』
次の瞬間、それは一息にぐうわと近くなり、息さえかかる耳元でそれは楽しそうな女子の肉声がした。
「本当の苦しみを、知っている?」
そしてまた、すっと声は遠くなる。
『ころせないのならしかたがない。でもおまえのそれはまだめざめていないの。だからかんぜんじゃないの。ころせないのはいまだけ。すぐにまたねむる。そうしたらきっと、わたしからおまえをまもりきれない。だからそれまで、あそびましょ?』
くすくすと声は、幼子の純粋さで笑う。残酷が故に無邪気なその声で。
『ほんとうのくるしみをおまえはしっている?それはしぬことじゃないの。ほんとうにこわいのはじぶんがしぬことじゃないの。たいせつなだれかが、しんでしまうことなの』
ぱたりとそれはあたしに染みる。
『かくれんぼしましょ?おまえはかくれるほうよ。おまえはたいせつなものがたくさんあるみたい。おまえはおまえのたいせつなものからかくれるの。もしもね、みつかってしまったらね・・・』
あはは!と堪えきれずに声は一層高く笑う。
『みんな、ころしてやる!おまえはまだころせないけれど、おまえのたいせつなにんげんはいくらでもころせるから!それがいやならにげるといい。うすよごれたのねずみのようにいぎたなく。いい?おまえは、おまえのことをしっていたにんげんだれにもおまえがいきていることをしられちゃいけない。わたしは、おまえがころせればいい。だから、ほかのにんげんが、しんでしまうかは、おまえしだい』
・・・ねぇ、待って。この声は、何を言っているの?あたしを殺す、って言っているの?あたしの大切な人を、殺すと。
ぼんやりとしている意識に必死で鞭打つ。
今あたしは夢を見ているのかもしれない。でも、こんな禍言言われて、現状の把握もしないで、頭ふわふわさせてる場合じゃないでしょ。起きろ、あたし!
『おまえ・・・!?』
あたしはぐぐと目蓋に力を入れた。今、あたしは目を閉じているらしい。それならまず目を開けなければ。そしてしっかり何が起こっているか見るんだ!
重い重い目蓋を薄く持ち上げたその向こう、驚いている女童の顔が、確かに見えた。
けれどそれはほんの一瞬のことで
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