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『八神はやて』は舞い降りた
第1章 悪魔のような聖女のような悪魔
第7話 凸凹姉妹
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―それに、原作で描写されていた光景を、この目で確かめたいのだ


 原作という色眼鏡を通すことで、空想と現実が混同しないだろうか。
 架空の登場人物と目の前の人物を切り離して考えられるだろうか。
 原作知識に振り回されて現実を軽視しないだろうか。
 いろいろと心配の種があるとはいえ、あまり緊張はしていない。
 ボクには頼もしい家族がいる。
 これから赴く戦場にも、リインフィースという心強い味方がいるのだから。

 
「ありがとう、シグナム、みんな。さあ、未来に向けての第一歩をいっしょに踏み出そう――――と、いうわけで、今日の晩御飯は何がいい?偽装に気づかれないためにも、いつも通り晩御飯の買い物にいかないとね」





「――ヴィータ姉はどう思う?」


 はやてが、あたしに尋ねてくる。眼をみれば、行く気まんまんだということが丸分かりだ。
 あいつは、意外と頑固なところがある。
 この問いかけも、家族の理解が欲しいからであって、確認に過ぎないのだろう。
 だから、あたしは迷わず賛同した。なぜなら――――


「――――これから戦いは厳しくなっていくんだ。いまから怖気づいていたら、後で苦労する羽目になる」


 あたしを含むヴォルケンリッターが、はやてと出会ったのは、あいつの誕生日の日付に変わったとき。
 ……もっと早く駆けつけられなかったのかと、いまだに悔んでいる。
 第一印象は、両親を殺され泣きじゃくる年相応のか弱い女の子。
 主の身を守り、命令に従うのが守護騎士の役目だから、助けた。
 いつものことであり、特別な感情を抱いてはいなかった。


 しかし、その後すぐに考えを改めることになる。
 嗚咽をこらえながらも、突然現れたあたしたちに、毅然とした態度であいつは接した。
 ほどなく駆けつけた魔王とやらには、状況がよくわかっていないあたしたちに代わって、彼女が主導して話を合わせた。


 ――――前世の記憶やら、原作知識やらのおかげだよ


 と、はやては、どこか自嘲しながら謙遜していた。
 しかし、年相応に振る舞う姿は、決して演技にはみえなかった。
 ここが異世界だとしても、関係ない。
 どのような事情があろうと、あたしは「八神はやて」という少女が大好きなのだから。


『ヴィータってお姉ちゃんみたい。ヴィータお姉ちゃんって呼んでもいい?』


 当時、9歳になったばかりのはやてと、外見年齢が8歳〜9歳相当のあたしは、背格好が同じくらいだった。
 一見すると、姉妹にみえないこともない―――もちろん、姉はあたしだ。
 外見年齢が近いからだろうか。
 大人びているように見えて、実は、寂しがりで甘えたがりなあいつは、とりわけあたしに懐いていた。

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