第5章 契約
第80話 勝利の後に
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ぼ同時に、未だ少しずつでは有りますが、龍気が活性化した事に因り血の巡りも良く成ったからなのか、ヌルりとした液体を溢れさせていた傷口が完全に塞がった事を感じました。
「ありがとうな、湖の乙女」
普段通りの微妙な距離に立つ湖の乙女に対して、そっと右手を伸ばし彼女の額を汚した俺の血潮を指で拭い去りながら、そう感謝の言葉を口にする俺。
その俺の言葉に、普段通りの無機質な表情を浮かべた彼女は僅かに首を横に振り、
「その傷はわたしが無理に異界化した空間に侵入する為に開いた傷」
……と言った。
その瞳には少し後悔の色が浮かぶ。
「それに、危ないトコロに駆けつけてくれて、みんな、ありがとうな」
湖の乙女だけではなく、その場に居る全員に対してそう告げる俺。
但し、彼女に対しては、額に付いた血糊を拭い去った右手をそのまま彼女の柔らかな紫色の髪の毛に当て、その柔らかさを手で確認しながら。
彼女の感じて居る後悔が無意味な事だと口で伝える代わりに。
そう。湖の乙女が悔やんでいるのは、もっと他の方法で異界化した空間に侵入する方法がなかったのか、と言う事なのでしょう。
確かに、崇拝される者ブリギッドや、マジャール侯爵麾下の飛竜騎士団は別の方法で侵入して来ましたが……。
ブリギッドの場合は、この地域。火竜山脈と言う地域に対して結んだ縁の絆に因って侵入して来たのでしょうし、
飛竜騎士団の方はおそらく力押し。一点突破で異空間への入り口を破って来たのでしょう。
まして、ブリギッドたちが侵入して来た時に存在していた神格の中で一番高かったのは風に乗りて歩むものイタカ。あれも危険な邪神なのですが、それでもクトゥルフ神話内で言うのなら風の小神レベル。
対して、湖の乙女たちが侵入して来た時に場を支配していたのは生きて居る炎クトゥグアの一部。紛う事なき炎の主神。
これでは神格が違い過ぎて、侵入する際の抵抗を比べる方が間違いですから。
「か、勘違いしないでよね。べ、別にアンタを助けに来た訳じゃなくて、ここに封じられて居たヤツが解き放たれたら、世界を滅ぼす邪神が召喚されるから、その召喚作業を邪魔する為にやって来たら、其処に偶々、アンタが居ただけなんだから」
プイと言う擬音がもっともしっくり来る素振りで視線を外しながら、何故かツンデレ・モードに入った崇拝される者ブリギッドが自棄に大きな声でそう言う。
ただ、その後にぼそぼそと小さな声で、そうよ、偶々、偶然、ここに来たらアンタが居ただけなんだから、と言う言葉もついでに聞こえて来たのですが。
もっとも、この言葉は最初に彼女が現われた時に口にした言葉。何故、私を最初に呼ばなかったのか、……と言う言葉に矛盾していると思いますけどね。
こんなト
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