第5章 契約
第80話 勝利の後に
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俺と同じ物。大地に横たわる、大きさ的に言うと一メートルほどの大きさと、それよりは少し小さい目のふたつに別れた黒い石を見つめたまま、そう話し掛けて来る妖精女王ティターニア。
整った顔立ちだが、普段通りのやや伏し目がちな瞳。それに、真っ直ぐに結ばれたくちびるから与えられる印象からか、何処か少し暗い雰囲気の漂う彼女。
但し、それ故に、彼女が微笑んだ瞬間には、周囲に花が咲いたような雰囲気を与えてくれる少女でも有ります。
そして、彼女の見立ては正しい。アレは……あの黒く光るふたつの大きな石は、彼女の言うように封印の要石。
ゆっくりと地上に向け降下を行いながら、そう考える俺。
そして……。
大地に降り立った瞬間、戦いの間中ずっと、俺と共に在り続けてくれていたタバサが自らの身体へと戻って行った。何となく、離れ難いような余韻を残して。
その瞬間、俺のシャツの背中を躊躇い勝ちに引っ張るような感触。
振り返った先。俺の真後ろには、この場……。生きて居る炎クトゥグアが危うく顕現し掛けた場所に彼女が現れた時から変わらない、湖の乙女の感情をあまり表には現さない整った容貌が存在していた。
いや、今の彼女は間違いなく微かにその整い過ぎた容貌を歪ませました。
多分、この場に居る誰にも判らないレベル。まして、気を読む俺で無ければ。更に、彼女と霊道と言う絆で結ばれた俺で無ければ判らないレベルの陰の感情を示す気が発せられなければ、彼女が顔を歪ませた事は気付かないレベルで……。
そう彼女の顔を見て考えた俺。その一瞬の隙に、少し伸び上がるようにして、俺に抱き着く彼女。
その瞬間、良く知って居る彼女の肌の香りが鼻腔を擽り、変わりに俺の瞳から流れ出した紅い液体が彼女の紫の髪の毛を。そして、密着させた身体に俺の左わき腹から再び溢れた紅い液体が彼女の羽織る薄手の濃いブラウンのカーディガンを濡らして行く。
そして、霧に沈む港町の夜のように、首筋に彼女の吐息を感じた瞬間……。
「ちょ、ちょっと、アンタ。い、い、い……一体、何をしているのよ!」
かなり動揺し、声が裏返った状態でそう怒鳴る崇拝される者ブリギッド。
いや、驚いたのは彼女だけではなく、アリアも、そして、ティターニアに関しても同じようにかなり驚いたような雰囲気を発したのは間違い有りません。
確かに、知らない人間から見るとこれは、どう考えても俺の首筋に口づけの跡を付けようとしているようにしか見えない行為。
但し、
「あ、いや、ブリギッド。ちょい待ち、これには理由が有る」
何と言うか、今にも引き離そうとして掴み掛かり兼ねない剣幕のブリギッドに対して、右手を上げて彼女の接近を押し止める俺。
尚、左腕に関しては俺に抱き着い
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