第5章 契約
第80話 勝利の後に
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思わず閉じて仕舞った瞳の裏側までを白に彩り、体感的には永遠に等しい時間の後。しかし、現実の時間に換算すると刹那の時間の後に、世界は何の前触れもなく、通常の理に支配された世界を取り戻していた。
そう。瞳を開いた先に広がって居た其処には、長かった夜が明け、明るい光に支配された朝が世界に訪れていたのです。
轟音が聞こえて来る事もない。噴き上げる火柱も存在せず。ぞっとするような……、肌を粟立たせ、その場に平伏して、ただただ何かに対して祈るしか方法がないような地の底から響き渡る咆哮も当然、ここには存在して居ませんでした。
ただ……。
ただ、昨日までよりは少し肌寒い――――
そう。山の朝は冷たく、そして、空気は澄む。まるで、先ほどまでの出来事自体が夢の中の出来事ではなかったのか、と思わせるほど、当たり前の秋の早朝の世界がここには存在して居たのでした。
最初にすべきは……。
視線を上げ、上空に視線を送る俺。
そう。炎の触手を自らの身体を盾にする事に因って阻み、運命の槍を放つ貴重な時間を導き出してくれた黒き翼を持つ少女の姿。無事な姿を求めたのだ。
確かに、一度だけ物理攻撃を完全に反射する仙術を彼女には施して有りましたから、彼女の身に何か不都合が発生しているとは考えられません。更に、彼女はクトゥグアの触手に弾き飛ばされたはずなのですが、それでも一瞬にして昇華、イオン化されずに弾き飛ばされたのですから、彼女自身も何らかの防御魔法を行使していたとは思うのですが……。
その視線を向けた先。秋に相応しい遙か彼方まで見通せる蒼穹。俺たちよりも百メートルほど上空にて滞空するオルニス族の少女シャルの姿を見つける事が出来た。
俺の視線に気付いた彼女が軽く右手を上げて答えてくれる。
この雰囲気ならば大丈夫。俺の方も軽く右手を上げて彼女に対して答えて置く。
それならば……。
今度は上空に向けていた視線を、クトゥグアの触手が顕現していた亀裂の有った場所へと向ける俺。
其処。大地に走る黒き亀裂の有ったはずの場所には――――
周囲に残る破壊の跡は計り知れず。但し、その中心。黒き亀裂の有ったはずの場所自体は、少し大地が抉れた状態と成った通常のむき出しの大地が存在しているだけで有った。
そう。まるで、先ほどまで荒れ狂って居た炎の邪神の触手が存在していた事さえ、実は夢の中の出来事で有ったのではないのかと思う程に当たり前の大地が。
しかし――――
その少し抉れた土砂の中に存在する黒く光る石。但し、それは別に高熱に晒される事に因って表面がガラス状態に成った訳ではなく、おそらく、元々そう言う石だったと思われる石。
その石は無残に真ん中の辺りにひびが入って居ました。
「あれが封印の要石ですね」
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