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時のK−City
第三章
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は毎日そんな話をするようになった。
「東京の高校ってなあ」
「堀越とかによ」
「あれは女の子だけだろ、行くのは」
 髭がそう言った。
「男はそうそう行けないんじゃなかったのか」
「ジャニーズのタレントは行ってるぜ」
「俺達ジャニーズじゃないしよ」
 この時はまだジャニーズといってもマッチやトシちゃんだった。トシちゃんは確か高校を卒業していたと思う。しぶガキ隊が出ていた頃だっただろうか。
「事務所も許しちゃくれんだろ、そんなの」
「じゃあどうするよ」
 ノッポが聞いてきた。
「中退させるわけにもいかんだろ」
「流石にそれはな」
 僕がそれに答えた。
「親父も反対してるしな。高校だけは出ろって」
「そりゃそうだな」
「東京も駄目だし。どうするよ」
「待つか」
 ここでリーダーがこう言った。
「待つって?」
「ここに残るんだよ、二人が卒業するまでな。どうだ」
「何かなあ」
 髭がそれを聞いてぼやいた。
「それだと時間かからねえか」
「ほんの少しの間だろ」
 リーダーはそれに対して反論した。
「大した時間じゃねえよ、そんなの」
「そういえばそうか」
 髭もそれを聞いて納得した。
「一年もないしな」
「まあそういうことだ。それ位なら我慢できるだろ?」
「ああ」
「じゃあそれでいいな。とりあえずは二人の卒業を待つ」
「よし」
「東京へ行くのはそれからだ。それでいいな」
「それでいくか」
「じゃあそれまではここにいようぜ。最後の名残にな」
 こうして僕達は二人の卒業を待つことにした。それから暫くの間は働いたり学校に通いながらバンドを続けていた。思えばそれが僕達とこの街との最後の時間であった。
 時間はあっという間に過ぎていった。そして二人は卒業した。遂にこの時が来たと思った。
「来たぜ」
 駅に電車が来た。これに乗ればもう後はない。東京に行くだけだ。
 リーダーがまず乗った。それから僕達が乗る。七人全員が乗り席に着くと扉が閉まった。電車はゆっくりと動きはじめた。
「これからどうなるかな」
「そんなの決まってるじゃねえか」
 不安が胸をよぎった時リーダーがこう言った。
「日本一のバンドになるんだよ。それ以外に何があるんだ」
「そうか」
「そうだよな」
 その一言で僕達は救われた。皆気持ちが明るくなった。
「もうこれで帰らないけどな、この街には」
「ああ」
「最後の別れだ。よく見ておこうぜ」
 僕達が今まで歌っていた店が見えてきた。赤や青、緑のネオンで飾られた看板が見える。思えばあの店でいつも歌っていた。けれどもうすぐ閉店の時間だ。
「あ・・・・・・」
 ネオンが消えた。急にだ。そして真っ暗になってしまった。
「消えたな」
「消えちまったな」
 僕達はその時に心
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