第二章
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はな。どうにもな」
「これがなくちゃ話にもならねえしな。いい奴いねえのかね」
「そうだなあ」
僕達はダンパで酒や煙草を手に席に座ってそんな話をしていた。周りは暗がりの中で赤や青の光がめまぐるしく動いている。客がその中で飛んだりはねたりしている。その中で話をしていた。
「久留米でいいバンドは大体見てきたけどな」
「フリーの奴でもいねえのかよ」
「いないな。これといったのがいない」
リーダーはそう言って首を横に振った。
「だから悩んでるんだよ」
募集はしているがやはり来ない。最後の最後で一番重要なのがいなかった。僕達六人はここにきて困り果てていた。
「御前ドラムやっか?」
「俺か?」
髭に話を振ってみた。
「どうだ、これも目立てるぜ」
「悪いけど俺ドラムはできないんだよ」
髭は困った顔をして左手を横に振った。
「あんなややこしいのはな。悪いができねえ」
「そうか」
「参ったな。どうしようか」
リーダーはカクテルを口にした。モスコミュールだ。この時からこいつがかなりの酒好きだということがわかった。夜になるといつも飲んでいるようだ。僕も好きな方だがこいつ程じゃない。こいつはもう酒を飲むことが生きがいみたいな奴だった。こう書くととても高校生じゃないが。
話をしている間に演奏しているバンドが変わった。はじめて見るバンドだ。
「今度はどんな連中だ?」
「どうせ大したことねえじゃねえのか」
話を中断してそちらに目を向けた。すぐにドラムの音が聴こえてきた。
「おい」
それを聴いて僕とリーダーは顔を見合わせた。そして同時に声をあげた。
「こいつは」
「ああ」
感じていることは同じだった。僕達はまた頷き合った。
「いけるな」
「こいつしかいないだろう」
他の連中はどうでもよかった。ドラムだけを見ていた。細い目をしたやけに愛嬌のある顔立ちの奴がそこにいた。僕達はこいつしかいないと確信した。
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