反董卓の章
第18話 『お兄ちゃん、負けないで』
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よそ二秒かそこらのはず。
まるで時間が圧縮されたような、長大な時間の流れを感じ、不意に俺の身体に震えが走り抜ける。
これは、恐怖か、それとも武者震いか――
「………………」
相手はどうかと目線を上げれば、呂布は腕を交差させてその場に立っている。
少しだけ後退ったような痕跡を残して。
その顔は……いや、口元が。
笑っていた。
「……お前、本当にやる」
呂布が交差させていた腕を下ろす。
少しだけ赤くなったような腕を見て、俺は知らずに歯を食いしばった。
(AMスーツの超パワーを、生身で……しかも逸らすのではなく、完全に受けきった……こいつは)
間違いない。
呂布は……
「無意識に『硬気功』を使って、いる」
御神苗先輩に聞いたことがある。
あの朧や同じ中国拳法の達人が使う硬気功が相手では、AMスーツのパワーとて相殺させてしまうのだと。
そして、同じく古代の英雄には、それを無意識で行っていた武将も数多くいたと。
それは力の増強、早さの増強といった身体的能力の拡大を基本として、戦闘時の肉体の頑強さすらも硬気功と同等以上に引き上げていただろうと。
それは鈴々や愛紗……この世界の女性の武将たち全てで、納得していた事だった。
だが、それでも……それでもだ。
ここまで常識はずれな能力を持った相手には、この世界にきてから見たことがない。
それは于吉や左慈すらも……
(三國無双、天下の飛将軍、本当の『無敵』の名を冠する者。呂奉先……)
俺は関羽や張飛といった豪傑を見て、その延長上にいると思い込んでいたのかもしれない。
彼女らとて、俺自身の力じゃ敵わない……
それでもAMスーツの力があれば、同等以上に戦えると密かに思っていたのだ。
だが、目の前の相手は違う――次元が、違う。
その事実だけが、俺の脳裏をかすめた時――
「……お………………で」
声が……聞こえた。
それは、すぐ後ろから。
確かに……聞こえたのだ。
「………………」
消え入りそうな言葉だったが、確かに聞こえた。
その言葉を理解した瞬間。
俺は、自身の歯を鳴らし、勢い余って唇の端を噛み切っていた。
「……お前とやるの、ちょっと楽しい。恋、半分くらい、本気でやる」
無感動な口調のその言葉すら、俺の脳裏には嘲笑のように聞こえた。
その事に、俺は切った唇から血を舐めて――嘲笑う。
負けられない。
たとえ俺が弱くとも。
負けられない。
たとえ俺が――『バケモノ』でも。
「……いいだろう。俺も本気でいく。例え、俺が……俺でなくなったとしても」
だって、言われ
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