反董卓の章
第18話 『お兄ちゃん、負けないで』
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ず、俺は追撃するわけもなく退いた。
退かされた。
それは……
「………………」
あの眼。
赤い髪に、日に焼けたような肌から垣間見える、あの双眸。
そこに込められた、威圧感……いや、違う。
あれは……歓喜だ。
「……お前、強い。恋をここまで下がらせたの、お前が初めて」
呂布は、無感動な口調でそう言い、轍に嵌った足を引っ込ぬく。
「力、すごい。早さもそこそこ。合格」
呂布はそう言って、戟のような武器を振るう。
……あれ、方天画戟、か?
どこまでも三国志演義かよ。
「さっきのちっこいのより、もう少しだけ本気、出す」
……俺、殴ったよな?
AMスーツの力で。
なんで平然としているんだよ……
「次、恋の番……いく」
そう言葉に出した矢先――呂布は、一足飛びにこちらへと迫る。
(!? 瞬歩!?)
左慈も使っていた、瞬間的な加速術である『瞬歩』。
まるでその早さのような跳躍。
いや、実際はそれより若干遅いと感じたのは、相手の攻撃をブロックして、体ごと宙に浮いた後で感じた感想だった。
「ぐうっ!?」
なにしろ、ガードが間に合ったのだ。
本来の『瞬歩』なら、ガードする暇すらない。
空中で態勢を整えようとして、不意に感じた殺気に確認する暇もなく右へと上体を避ける。
それを掠めるようにギロチンのような戟の刃が、俺の髪を数本散らす。
「………………」
着地する瞬間にも新たな殺気。
勘だけでしゃがみ込み、頭上に巻き起こる突風を感じで背筋に冷や汗が流れた。
(下がるとヤバイ――)
それすら、ただの勘。
瞬間的に斜め前に前転しつつ、右足を縦のローリングソバットのように振り上げた。
その横に、さらなる風圧を感じつつも、足を振り下ろす。
だが――そこに目標はいない。
(ミギ――)
頭の何かが囁くような声ならぬ声。
途端に視界が広がり、頭上から見下ろしているような感覚の中。
軸足の左足を、右足を下ろす反動で跳ね上げて、声の示した方向へと蹴りを穿つ。
「!」
息が止まるような気配を感じ、その左足が何かに当たったような衝撃が伝わる。
だが、それは生身のソレを蹴った感触ではない。
まるで岩の塊――それに正面から蹴倒したような感触。
AMスーツの恩恵がなければ、間違いなく足を挫いていただろう。
だが、それを確認する暇もなく、右足が大地に着いた瞬間に、さらに地面を蹴って飛び退る。
その足が再び地面に着いた時、急激な時間の流れを感じて俺は顔を上げた。
「――っぱあ!」
呂布が飛び込んできて、一連の攻防にかかった時間はお
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