反董卓の章
第18話 『お兄ちゃん、負けないで』
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ずや。
盾二と同等……いや、それ以上の策を、あの一瞬でこしらえるなんて――
「くっ……何しとんねん! 歩兵隊、前に出んかい! 敵の槍隊にぶつかって足止めするんや!」
ウチが叫ぶ。
けど、歩兵隊は及び腰になっていて、その足並みが乱れている。
(ちぃ! あかん! こんなところで急造の混成部隊の弱みが出るやなんて!)
後方に配置させた五万の後詰の部隊。
先日、急遽北と南の関から動員させた兵。
しかし、話を聞けばその両方共、まともな戦闘はしておらんかったらしい。
にらみ合いのまま、関に篭もる日々……
当然、それらの兵の士気は、だださがりや。
そして、いきなりの参集令に、移動してみれば……そこは死地。
士気もない部隊なんぞ、ただの張子の虎や。
(ホンマに使えん! このままじゃ、逃げ出すのも時間の問題――)
いざとなれば総撤退させる可能性もあった為に開けておいた、虎牢関の大門。
上手く行けば悠然と、下手をすれば少しでも逃げ道を――
そのために開けていた門を振り返り、退却の指示を出すか迷う。
(――いや、いやいや、まだやっ! こっちの騎馬隊は半分以上やられてもうたが、まだ恋の部隊が残っとるはず!)
あの恋のことや。
そう簡単にやられるようなタマやない。
なら恋の方に逃げるか……?
あかん。
それじゃあ、ウチはただのお荷物やんか!
せめて、せめて、今追撃してきとる曹操軍だけでも押し返さな……
「見つけたぞ! 霞っ!」
!?
不意に呼ばれた声に、ウチは馬を回頭させる。
そこにいたのは――
「あ、愛紗!?」
「……霞」
そこにおったのは、部隊を率いた愛紗の姿……
なんでや!?
なんで曹操軍に愛紗がおんねん!?
「あんさん、劉備軍にいたんじゃ……」
「? もちろん劉備軍だ。曹操軍へはご主人様の命により、共闘しているにすぎん」
共闘……つまり、愛紗は自分の配下と一緒に曹操軍の援軍に。
なら、盾二は……
「……恋、呂布の元にいるんか」
「……ああ。鈴々と共にな」
誰が、とは言わん。
愛紗も言わへん。
ウチらの共通の相手なんぞ、一人しかおらんからや。
「……たとえ愛紗やとて、ウチは負けへんよ」
「……そういえば、手合わせは一別以来だな」
ウチと愛紗が互いに笑う。
互いに武人同士。
なら、数千の言葉より、一合がすべてを語る。
「いくで! 愛紗!」
「こい! 霞!」
ウチと愛紗――張文遠と関雲長の死合は、馬上の一撃から始まった。
―― 文醜 side ――
「猪々子さん! 斗詩さん!
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