反董卓の章
第18話 『お兄ちゃん、負けないで』
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だ! 斉射三連!」
秋蘭の声と共に、こちらの弓隊が混乱した騎馬隊に矢の雨を降らせる。
「春蘭、関羽! 矢の切れ目と同時に騎馬隊を押し返しなさい!」
「御意!」
「……承知」
降り注ぐ三射目の頃合いを見計らって、ほぼ同時に動く。
その動きはまるで合わせ鏡のように。
春蘭はおそらく勘、関羽は……経験かしら?
突撃部隊の騎馬兵は、加速度的にその数を減らしていく。
それをまずいと見た張遼は、槍を振り回しながら一時撤退を叫んでいるが――
「そうはさせない! 今が好機よ! 少しでも削って戦意を削ぎなさい! 全軍、抜刀!」
私の合図とともに、混乱したふりをしていた本陣の兵がすかさず陣容に戻って剣を抜く。
「突撃なさい!」
「「「 オオオオオオッ! 」」」
我が声に呼応したように、前進する。
できればここで、張遼の部隊を数千にまで減らしたい。
会心の策、それが成ったと思う。
だが、私の心には相反する部分があり、それが――臍を噛む。
(これが、我軍に対して行われた策だったら――)
……いえ、今は考えるべきではない。
そう思うのだが。
どうしても晴れない心の靄の中。
私の口は、前進を指示していた。
―― 張飛 side ――
「うりゃりゃりゃりゃあーっ!」
鈴々は、本気でりょふのおねーちゃんに攻撃するのだ。
鈴々は昔に比べて随分強くなったと思っているのだ。
足を鍛えて一日中走っていても問題なくなったのだ。
お兄ちゃんを師と仰いで、直線的な動きを直したのだ。
そして将としても、被害を抑えて良い将になるために、苦手な勉強だってしたのだ。
でも……でも……
なんでなのだ!?
「……強い。けど、本気出すほどじゃない」
「ぐっ!」
どうしてこんなに攻撃がうまく当たらないのだ!?
「ちょっとだけ、本気出した……お前、それは誇っていい」
「な、なめるなー!」
鈴々の攻撃は突き、凪ぎ、払う。
けど、それらは全てりょふのおねーちゃんの武器で防がれる。
お兄ちゃんに教わった『ふぇいんと』もいれたのに、あっさりと蛇矛を弾かれる。
「……そろそろ恋の番」
「!?」
今まで防戦一方……と思っていた、りょふのおねーちゃんの気配が変わる。
さっき感じた、あの蛇に睨まれたような感覚が、再度鈴々を襲ったのだ。
(な、なんかやばいのだー!?)
一瞬で変わった殺気に、慌てて防御しようとする。
けど――
「さっきより、ちょっとだけ早くする」
「!?」
腕が動くのが見えた。
『視えた』のだ。
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