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時のK−City
第一章
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僕も大体決心していた。
「じゃあそれでいいな。俺がギターで御前さんがベース」
「はい」
「で、御前がヴォーカルだ。それでいいな」
「ああ」
 僕はここではじめて頷いた。これで決まった。
「よし、三人だな。けれどまだ足りないな」
「ドラムもいないしな」
「いや、ドラムじゃなくてな」
 また言いはじめた。
「ヴォーカルだよ。御前の他にもっと欲しいな」
「ヴォーカルを何人も置くのかよ」
 それを聞いてかなり戸惑った。普通そんなバンドはあまりない。
「冗談だろ」
「いや、本気だぜ。一人だと厚みに限界があるからな」
「そんなもんか」
「まあ俺に任せてくれ。誰かいいのいたら入れればいい」
「ああ、それなら俺一人知ってるよ」
 弟がここで言った。
「誰だよ、それ」
「ほら、あの人だよ」
 弟は僕の問いにそう答えてきた。
「あの人?」
「兄ちゃんもいつも遊んでたじゃないか、幼稚園の頃から」
「ああ、あいつか」
 そう言われてやっとわかった。あいつだ。高校生なのにもう口髭を生やしているが僕と同じ歳のやつで一人歌がそこそこいけるのがいる。あいつならいいと思った。
「あの人ならいいだろ」
「そうだな」
 言われてやっと気付いた。確かにあいつなら大丈夫だと思った。
「じゃあそれで決まりだね。問題はあの人がうんて言うかだけれど」
「それなら心配ねえよ」
 僕はそう答えた。
「あいつはあれで目立ちたがり屋だしな。それは大丈夫だよ」
「そうなのか」
「自己主張が強くてな。昔っからそうだった」
「ヴォーカル向きかもな」
「低い声は俺よりいいぜ。それでいいか」
「そうだな。バスもいればいい」
 僕は声が高かった。それがあってそいつを推したという一面もあった。高い声と低い声があれば確かに厚みができるからだ。
「じゃあそれでいいな」
「ああ」
「俺が連絡とっておくよ」
「頼むぜ」
 三人で話がはじまった。リーダーは僕じゃなく今目の前にいるこのギターがやることになった。言いだしっぺだけでなくリーダーシップもあると思ったからだ。そしてそれは当たった。


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