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時のK−City
第一章
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知ってるよ」
 弟は素っ気無く答えた。こいつもツッパっている。うちの家は親父が喧嘩になったら勝つまで家に入れないっていう位こと喧嘩に関しちゃ厳しかったので結果として僕もこいつもぐれちまった。本当にとんでもない親父だと思っている。煙草も小学生の時からやっている。かれど喧嘩に負ける方が駄目らしい。つくづくわからない親父だ。けれどそのせいか今こうしてバンドをしている。そう思うと親父に感謝するべきか。
「で、何でよりによってあいつのグループと一緒にやらなきゃならないんだよ」
「けれどグループはもうないんだろ?」
「ああ」
 僕は憮然として答えた。
「だったらいいじゃないか。丁度これからどうしようか考えていたところだしさ」
「そうは言ってもな」
 それでもまだ納得してはいなかった。
「あいつと俺はライバルみたいなものだぞ。それでどうやってな」
「あっちから話が来たらどうする?」
「あっちから」
「うん。実はさ、俺あの人と話をしたんだ」
「あいつとか」
「ああ。それで兄ちゃんと話がしたいって言ってるんだけれど」
「俺とかよ」
「この街で一番凄いバンドを作りたいって言ってたよ。会ってみる?」
「断るに決まってるだろ」
 僕はその時すぐにそう答えた。
「何でだよ」
「あいつとだけは組めるもんか。俺とあいつは敵同士だぞ」
「話してみると悪い人じゃなかったよ」
「猫かぶってるんだよ。その位わかれよ」
「けれど一回位会ってもいいんじゃないかな。向こうから会いたがっているし」
「会っても俺の気持ちは変わらないぞ」
「そう言わずにさ。向こうからのお願いだし。いいだろ」
「ううむ」
 僕はその時腕を組んで真剣に悩んだ。あいつとは今まですっとライバルだと思ってやってきた。それが急に話がしたいと言って来た。悩まずにはいられなかった。
「そんなに会いたがってるのかよ」
「そうみたいだよ。絶対に兄ちゃんに会わせろって言ってたから」
「わかった。一回だけだぞ」
「会ってくれるんだね」
「けれど一回だけだ。いいか、会ってもあいつとだけは絶対にやらないからな」
「わかったよ。じゃああちらにはそう話しておくよ」
「勝手にしやがれ」
 電話に向かう弟にそう言ってギターに戻った。だがどういうわけかギターを扱う指の動きが普段と違う。妙に震えているのだ。
「何だ、おかしいな」
 それを見てさらに機嫌が悪くなった。どういうわけかイライラしてきた。
「ギターなんていつも使っているのによ。どういうことなんだよ」
 たまりかねてギターを隅に置いた。そしてその日はそのまま寝てしまった。どういうわけか急に胸騒ぎまでしてきた。それを押さえるのに必死だった。
 次の日早速そいつがやって来た。見ればあまり背も高くないごく普通の身なりの奴だった。僕と
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