焦がれる夏
弐拾漆 きっかけの一打
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の大会にも関わらず、決勝まで勝ち上がってきたー!」
「「そうだー!!」」
「今日も勝って、甲子園に行って、新しい歴史刻むぞォー!」
「「そうだー!!」」
「全員注目」の煽りも、真理は随分と板に付いていた。もう既に、この真っ赤な応援席が一つになっているような気がする。
スパニッシュフィーバーのイントロが流れ始める。吹いているのは玲。
応援団の持つメガホンが揺れ始める。
応援席が、一つの"生き物"になっていった。
ーーーーーーーーーーーーーー
<1番ショート青葉君>
アナウンスと自軍応援席からのスパニッシュフィーバーに送られて青葉が打席へと向かう。
夏の大会の雰囲気にも慣れたものだった。
決勝戦でも変わらない。いつもの曲、いつもの左打席。
(行くしかない。初球から!)
青葉がオープンスタンスで構えると、是礼の先発ピッチャー高雄が振りかぶる。
サイレンがけたたましく鳴り始める。
高雄はテークバック小さく、狭いステップのフォームから初球を投げ込む。強い上半身の力を生かして腕を振る。
青葉の狙いとは違い、球種はスライダー。
真ん中の高めに入ってきた。
少し泳ぎながらも、青葉はバットを振り抜く。
カーン!
右手一本で払いのけるようなスイングから、ライナーがライト前に飛んでいった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「…打たれたな」
「不用意な初球でしたね。変化球から入って早打ちの青葉のタイミングをズラそうとしたんでしょうけど」
先頭打者の出塁を許し、是礼ベンチでは冬月と真矢がいつも通りブツブツ言葉を交わし始める。
「青葉はここまで5盗塁か」
「はい。でも、大会が進むにつれて采配は慎重になっています。」
「送ってくるだろうな…」
是礼ベンチの予想通り、日向がネクストから出したサインは送りバント。2番の健介はそのサインに頷いた。
(先制点が欲しいからなぁ。簡単に盗塁できるようなバッテリーでもないし。)
是礼の内野守備の動きは良い。
健介は二塁封殺を恐れて、最初からバントの構えはしない事にした。
高雄が牽制球を一球挟んだ後、初球を投げる。
投球と同時にバントの構えをした健介の視界の端に、猛然とダッシュしてくるサードの最上の姿が映った。
(バントシフト!?)
焦る健介の気持ちを斟酌せずボールは投げ込まれる。内角高めに抜け気味の真っ直ぐが飛んできた。
(うわっ)
健介は飛びのいて避けようとするが、そのバットにボールが当たった。
(おぅっ!?)
しかし、たまたまバットに当たった球は小飛球になって、前進してきたサードの頭上を襲う。
長身の最上が急ブレーキをかけてグラブを伸ばすが、その先っぽに弾かれたボール
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