Episode20:十字の道化師
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「くっ、油断したな…」
雫とほのかが正体不明の組織に連れ去られた後、隼人は雑居ビルのほど近くにあるバーに足を運んでいた。そこは、九十九家がよくお世話になる情報屋がいる場所であった。
「傷は浅かったからよかったねぇ。このくらいなら、すぐに治るよ」
「ん、ありがと沙織さん」
情報屋の名前は黒条沙織。櫂よりも少し年上の女性だ。
最後、刺された足を治療してもらった隼人は沙織に礼を言って、懐からほのかの端末を取り出した。そして躊躇なく立ち上げる。
「おやおや、そりゃ女の子の端末だろう?勝手に見ちゃっていいのかい?」
「今は緊急事態だから仕方ないよ、ってことにしといてくれないかな?」
からかうように言う沙織に苦笑いしつつ、隼人はほのか宛に届いていたメールを開いた。そして、それをカウンターの向こうに戻った沙織に差し出す。
「これは、脅迫文みたいねぇ…まったく女の子にこんな脅すような真似するなんて相当ダメな男ね」
相変わらずだね、というのが隼人の正直な感想だった。だが、今は雑談にかまけている場合ではない。
意識を切り替えて、隼人は沙織の持つ端末の画面を下へスクロールさせていく。すると、
「これは…」
「うん。多分、これは何かの組織のトレードマークなんだと思う」
ほのかに送られた脅迫メールの最後、そこには、十字架に吊るされたモノトーンのピエロの画像が添付されていた。
「なにか、分かることはある?」
「…このトレードマークの組織は一つしかないね」
長年、情報屋として生きてきた彼女だからこそ、このトレードマークに見覚えがあった。いや、情報屋としてこの組織を知らないというのは有り得ない。それほどまでに、この組織は危険だった。
隼人に伝えて良いべきものか。そう沙織が逡巡したのは束の間。隼人の射抜くような視線を受けて、沙織は覚悟を決めた。
「組織の名前は、十字の道化師。世界的に危険視されている人身売買の組織だよ」
「人身売買!?」
隼人が驚きに声を上げた。沙織の言ったことが本当なのだとしたらマズイ。一刻も早く雫とほのかを助けに行かなければならない。
そう判断して、隼人は座っていたイスから立ち上がった。その時に刺された足が痛むが、そんなことを気にしてはいられない。
「沙織さん、十字の道化師の拠点はわかる?」
「一人で乗り込もうって言うのかい?」
それは、問わずとも分かっていることだった。しかし問いかけてしまうのは、沙織が本当に危険だと思っているからだ。けど、隼人は引けなかった。
「雫とほのかが連れ去られたのは俺の責任だからね、助けないわけにはいかないでしょ。それになにより、二人は友達だ
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