暁 〜小説投稿サイト〜
魔法科高校の神童生
Episode20:十字の道化師
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思われがちだが硬化魔法は物質の強度を高める魔法ではない。パーツの相対位置を固定する魔法だ。今回、この男は地面と隼人の足を一つのパーツとしてその相対位置を固定している。反射的に消失(デリート)で消し去ろうとするが、寸前で思い留まる。現在の集中力では、自分の足ごと消しかねなかった。それに、そんな猶予もなかった。加速して接近してくる男の足をベレッタで狙うが躱されてしまう。あっという間に懐に侵入され、刀の白刃が隼人の首を狩ろうと迫る。鋭い金属音が響き、純白の刀は漆黒の短剣に防がれた。

「くっ…」

鍔迫り合いの状態から無理矢理抜け出した男は身動きのとれない隼人に向かって縦横無尽に刃を振り始めた。隼人はそれをなんとか短剣で捌いているが、その得物は元々投擲用に作られたもの。例え技量が同等でも武器の得手不得手で差が出始める。
男の放った鋭い突きが隼人の手から短剣を弾き飛ばした。それに舌打ちを漏らして隼人は横薙ぎに振るわれる刀を屈んで躱す。

「おおッ!」

雄叫びに合わせて男が袈裟懸けに刃を振り下ろした。だがその瞬間、感じたこともない圧力が男を頭上から押しつぶした。
領域干渉魔法・歪重空間(グラビトン・エリア)。普段の数倍の圧力が加わった男は、耐え切れずに膝を折ってしまった。刹那、硬化魔法の支配から領域干渉で無理矢理解放された隼人のインステップ・キックが男の鳩尾に着弾し、そのまま壁まで吹き飛ばされた。

「ぐっ…!」

壁に激突した男は呻き声を上げてなんとか立ち上がった。肋骨の数本は確実に折れているためこれ以上の戦闘は恐らく難しいだろうが、男は戦うのを止めようとはしなかった。そもそも男が隼人と戦っているのは彼の主たる十字の道化師(クロスズ・ピエロ)のリーダーの娘の命令だ。彼女の命令は絶対。達成するか、死ぬか。そのどちらでしか命令を終えることはできない。そして男に与えられた命令は『侵入者』の始末。ここで立ち去れるはずがなかった。
だが、このままでは勝つことは不可能。ならばと、男は最後の足掻きをすべくブレスレット型のCADに触れた。
隼人が不穏な気配を察知して身構えるが、遅かった。

「凍てつけ…!」

サイオン光が煌き、薄暗い廊下が眩い光に覆われる。
あまりの光量に目を覆った隼人が次に見たのは、白く光る極寒の世界だった。

振動減速系広域魔法・ニブルヘイム。

キラキラと光るダイヤモンドダストに、隼人は顔を顰めた。

「ニブルヘイム…まさか、アンタがこれほどの魔法を使うとは思わなかったよ」

自嘲気味に笑った隼人は徐々に手足の感覚がなくなっていくことを感じた。だから、早々に決着をつけることにした。

「俺も、少し本気になったほうがいいか」

左手を前に差し出す。差し出した左手を中心に、
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