Episode20:十字の道化師
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躙していく。やがて、廊下にいる全ての敵組員を倒し終えた隼人は廊下の突き当たりにある階段の手前で、一つ溜息をついた。
その一瞬の隙が、命取りとなる。
「っ!?」
反射的に顔を傾けた目の前を、空間の揺らぎが通過していく。
間一髪敵の不意打ちを躱した隼人は、体を倒し数回のバック転で階段から距離を取った。瞬間、周囲の空間全てが揺らぎ始める。
「くっ、これは…断熱圧縮か!」
加重魔法により熱を遮断して空気を極限まで圧縮する。その後に起こる現象は一つしかない。
「やむを得ない…!」
空間が爆発を起こした。圧縮された空気を一気に解き放つことにより起こる熱膨張の爆発だ。
全方向を囲まれていた隼人に、逃げ場はない。だが、事前にこの攻撃を隼人は読んでいた。
空間に歪が生じて、爆発そのもの が消え去る。
消失で爆発を消し去った隼人は、階段下にいる敵が僅かに動揺する気配を察知した。しかし、すぐに距離を詰めることはせず、隼人は一度息を吐き出して目を瞑った。襲いくる疲労感を懸命に鎮める。長時間の魔法の連続使用。それは、隼人のスタミナを根刮ぎ奪っていっていた。
「ハァー…しんどいけど、ここで止まってるわけにはいかないよね」
どうやら敵は隼人の出方を伺っているようだ。ならば、と隼人はわざと敵の目に姿を晒した。まるで警戒している様子のない雰囲気に、敵は油断したようだった。姿を隠しながら、確実に接近してきている。
刹那、バァン!という大音響が鳴り響き、隼人の姿がかき消えた。
「油断禁物、だよ?」
敵の男が最後に見たのは、嘲笑を浮かべて拳を構えた隼人の姿だった。
脳を揺らすほどの衝撃が、拳が着弾した顎から伝わり、男の意識は引き千切られ、背後の壁にめり込んだ。
恐らく死んではいないだろうが、ぐったりして動かない男を一瞥して、隼人は新たな気配を感じた。
「……化け物め」
吐き捨てるような声が聞こえてきて、隼人は視線を左へスライドした。その視線は、鋭い。
「…心外だね、俺だって人間だよ?」
隼人の視線の先には、一人の男が立っていた。細く、光を宿さない目、羽織った黒コートに隠された体つきは恐らく強靭。更に、腰に吊るした一振りの刃。
危険。一目でそう判断した隼人は緩みかけていた集中力を高めた。
「どちらにせよ貴様が我々にとって危険なのは間違いない…死んでもらおう」
そう言った男は、手を左腰の刀に伸ばした。そして左足を下げ半身の体制をとる。
「それはこっちも同じだよ。俺らにしたら、アンタらは危険だ…始末させてもらうよ」
対して隼人はなんの構えもとらず、ただ立っているだけに見える。
だがそれが隼人の構えなのだと、そう気付いたのは男が隼人の懐に入り込ん
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