Episode20:十字の道化師
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意に変わった。達也の手は拳銃形態のCADへ伸び、深雪も既にタブレット型のCADを構えている。
そんな二人を見て、隼人は思わず吹き出した。
「ふふっ、そんな身構えなくてもいいよ冗談なんだから」
「その根拠は?」
まったく達也は心配性だなぁ、と呟いて隼人はポケットからほのかの端末を取り出した。
「俺も二人と同じだからさ。今は、『九十九』じゃなくて『隼人』だから」
「…なるほど。十分信頼に足る理由だな」
「お兄様…?」
不安げな声を上げる深雪の頭に手を置いて、達也は大丈夫と囁いた。
「なら、ちゃっちゃと行こうか。あまり時間をかけるわけにはいかないからね」
「そうだな、それでどう攻めるんだ?」
誤解が解けたことに内心安堵してる隼人を他所に、達也と深雪は立ち上がって眼前に不気味に聳える研究所を見据えた。
「…俺は上からヘリを潰して行くよ」
「分かった。なら、俺達は下から行くとしよう」
そして、三人で頷き合って隼人は再びワイヤーを使って屋上へ飛び乗った。
達也と深雪が攻め込むのは、隼人がヘリを破壊した瞬間。敵の意識が上へ向いた時に奇襲することになっている。
「さあ、派手に行こうか!」
止まっているヘリコプターの上へジャンプした隼人は、拳を握って思い切り体を引き絞った。裂帛の気合と共に打ち込まれる、雷を帯びた拳。
雷鳴とコンクリートの崩壊する音が、人気のない郊外に響き渡った。
現在、十字の道化師のアジトとなっている研究所内部は混乱に見舞われていた。
いきなりの敵襲は、屋上もろとも崩壊させるほどの派手さ。そしてそれに紛れるように一階から侵入した敵もみるみる内に一階を制圧しかかっていた。
組員が慌てて敵の拘束または殺害を試みるも、その全てが返り討ちに遭う。ある組員は雷撃に打たれて、ある組員は格闘術により昏倒させられ、またある組員は氷の彫像と化していた。
一階と三階から始まったパニックは瞬く間にアジト全体に広まり、統率などとれるはずもない状態だった。
だが、ある一角の部屋で、女は静かに二人の男に命令を下した。二人の男は頷くと、一人は一階へ、一人は三階へと向かって行った。一人薄暗い部屋に残った女は、残忍な笑みを浮かべて彼女の背後に寝かされた二人の少女を見つめていた。
「邪魔だよ!」
狭い廊下を縦横無尽に疾駆して、ライフルを撃ち続ける敵をワイヤーで拘束、からのインライトで確実に数を減らして行く。時にはベレッタの引き金を引き、投擲剣を敵の眉間に突き刺す。
まるで隼人にだけ重力がないかのように、壁を走り天井を駆け、敵を蹂
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