Episode20:十字の道化師
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アを開けたら兄が驚いた顔をしていた。思わずその顔をずっと見ていたい衝動に駆られたが、なんとか抑えると事の顛末を知っている限り早口で捲し立てた。
相当な早口で捲し立てたにも拘らず、彼女の兄は一度考える素振りをしてから頷くと深雪に着替えを促した。兄の言わんとすることを素早く理解した深雪は急いで部屋に戻って着替えを済ませた。デスクの上に置いてあったCADを取って上着を羽織る。どうやら兄は既に家を出たようだ。それを確認すると深雪も外へでて鍵をかける。そして、電動二輪で玄関前まで来た兄からヘルメットを受け取るとすぐに被って跨る。
「掴まっててな」、と兄の声が聞こえたときにはもう電動二輪は走り出していた。
公道から外れて少しして、深雪と達也は目的地に辿り着いた。雫とほのかが囚われているであろう研究所近くの茂みに電動二輪を止めると、他にもう一台の電動二輪があることに気づいた。だが、どうせ敵の所有物なのだろうと思い、無視して茂みに身を隠して、研究所の様子を伺う。
その時だった。深雪の側にいた達也が身構えた。それに反射的に反応して深雪も警戒レベルを上げる。敵襲か、そう思ったとき、その声は聞こえた。
「やあ達也、深雪さん。こんなところでなにしてるんだい?」
目の前には、ニコニコと人懐こい笑みを浮かべる友人、九十九隼人の姿があった。
「やあ達也、深雪さん。こんなところでなにしてるんだい?」
ニコニコと隼人はそう言うと、目の前の達也が溜息と共に構えていた拳を下ろした。
「いや、それはこっちのセリフなんだが…もしかしてお仕事か?政府の番犬さんは」
「へぇ、気づいてたんだね。九十九家の本質に」
愉しそうに隼人が笑みを漏らす。不穏な空気を漂わせる隼人と達也に、話についていけない深雪だけが不安げに達也の服の裾を掴んでいた。
「深雪さんは知らないみたいだから教えてあげるよ。九十九家は暗殺一家なんだ。それも、政府お抱えのね」
九十九家は、基本的に誰からの依頼であろうと暗殺者である人間が受けると言えば殺しを行う。だが、一般への周知度は高いわけではない。九十九家の基本的なクライアントは政府や軍などが殆どだ。だから、本当に詳しく九十九家を知らない人間は九十九家を政府お抱えという。達也はその一人だったのだろう。知らないのなら、これ以上知らなくていい。隼人はそう判断して達也と深雪に、「九十九家は政府お抱えである」とウソをついた。
だが、隼人が暗殺者と認識されたことに変わりはなかった。
二人から、明確な敵意が突き刺さる。
「俺達を殺すか?」
達也から投げかけられた問いに、隼人は大きな笑みを浮かべた。
「君達を殺るには、骨が折れそうだ」
敵意が殺
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