Episode20:十字の道化師
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から」
そう言って少し照れ臭そうに微笑んだ隼人に、沙織は白旗を上げた。
溜息を一つ漏らし、自分の端末の操作を始める。
「店の外に電動二輪がある。アンタの端末にアジトの場所送っといたから、それ使っていきな。あと、連れ去られた二人の家族には櫂を通して事実を伝えさせてもらうよ」
「うん、ありがとう沙織さん」
沙織の答えに満足したのか、電動二輪のキーを受け取った隼人はバーの出口へ向かった。
「女の子助けるんだから、しっかりフラグ建てときなさいな」
「ふらぐ?なんか、よくわからないけどがんばってみるよ」
そして、隼人は店を出た。バタンと扉の閉まる音を聞いて、沙織はすぐさま端末から櫂の番号をひっ張りだした。
深夜の公道を一台の電動二輪が疾走する。沙織から十字の道化師の拠点の場所を教えてもらった隼人は消耗した体力や集中力を無視して沙織の示した通りの道を走り続けた。少しスピードが速すぎるのは、加速魔法を電動二輪ごと自らにかけているからなのだろう。周囲に車や隼人と同じ電動二輪の存在がなかったのは幸いだ。
沙織が櫂に連絡して、櫂から雫とほのかの家族に攫われたことが伝わる。そうなれば警察も動き出すだろう。しかし、隼人に警察を頼るという選択肢は存在していなかった。
「っ…!」
更に電動二輪のギアを上げ、隼人は十字の道化師の拠点となっている廃墟へと急いだ。
櫂に、隼人が単独で十字の道化師のアジトに向かったという報せが届いたのは、丁度、北山雫の父、北山潮に娘が攫われたとの連絡を受けたときだった。
沙織の話をすぐさま理解した櫂は潮に手短に状況を説明すると、モニターに映る沙織と潮に微笑みかけた。
「隼人が向かっているなら大丈夫だ。あいつは、同じ過ちは繰り返さない」
一部の淀みもなくそう断言した櫂に、潮は驚き、沙織は若干呆れていた。その二人の様子に更に笑みを深めて、頬杖を突く。
「『九十九隼人』は、たかがピエロに負けはしないよ」
それは櫂が隼人のことを息子としてではなく、一人の暗殺者、一人の魔法師として認めているからこその言葉であった。
「潮さん、まだ不安だったのなら言っておきましょう。あいつはもう、オレよりも強い」
今度は別の意味で驚く潮を、櫂は楽しげに眺めていた。
電動二輪を走らせること一時間。ようやく目的地に辿り着いた隼人は目の前に聳える建物の近くにある茂みに電動二輪を止めた。
そのまま気配
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