第六十七話 人相その十四
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「それでなんですよ」
「そうか」
「もう顔が違うみたいですね、そうしたことをする奴は」
人は生き方が顔に出る、人を何人も殺す様な輩にしてもそれは同じということだ。
「本当に」
「人相だな」
「それが出るみたいですね」
「人は四十になれば己の顔に自信を持て」
工藤はここでこの言葉を出した。
「そう言うな」
「リンカーンの言葉でしたっけ」
「そうだ」
「生き方が顔に出るんですね」
「二十までは親から貰った顔でだ」
そしてだというのだ。
「四十は自分が作る顔だ」
「四十は、ですか」
「そう言われた、昔上官にな」
「そうなんですね」
「とはいっても俺はまだそこまで長生きしていないがな」
これは高橋もだ、二人共まだ若い。
「だがそう言われた」
「人相ですねえ」
「しかし四十にならなくとも生き方は顔に出る」
それでもだというのだ。
「そうも言われた」
「四十でなくとも」
「そうだ、出るものだろうな」
「剣士でそうした顔の人っていませんね」
人相の悪い、そうした者はというのだ。
「一人も」
「そうだな、いないな」
「どの人もいい顔をしてますね」
あの加藤にしてもだ、陰があり目の光は鋭いがそれでも顔の相自体は悪いものではないのだ。
「戦うことを選んでいる人も」
「少なくともネットで荒らす様な奴はいない」
「はい、確かに」
「己が正しいことをしていると言い切れる様な奴でもな」
そうした輩も一人もいないというのだ。
「だから必ずな」
「何か。どの剣士もですね」
「戦いを止められると思うがな」
「殆どの人が間違ってるって思っていますからね」
「あの先生といいな」
「はい、高代先生も」
具体的には彼であった。
「それはわかっていますからね」
「だがわかっていてもだ」
「願いの為にはですね」
「選んだ、俺にしても何か特別な願いがあれば」
それがあればというのだ、工藤にしても。
「若しかしたらな」
「戦っていたかも知れないですか」
「俺は自衛官だ、自衛官はいざとなれば戦う」
それが責務だ、だがそれでもだというのだ。
「しかしそれは戦う為の戦いでもなければ己の為の戦いではない」
「守る為の戦いですね」
国民を、彼等をだ。
「俺もそうですからね」
「警官もだな」
「同じですからね、戦う理由は」
このことは変わらなかった、そのうえ。
「俺達は特に強い願いもないですし」
「戦うことはだな」
「止めることを選べましたね」
「そうだな、ではな」
「何とかしましょう」
「俺達もな」
こう話してそうしてだった、彼等は靴も磨き身の回りを整えつつ戦いのことを考えていた、剣士達の誰もがその心が悪いものではないことを確かめながら。
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