第六十七話 人相その九
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「だからいいことばかりではない」
「リスクもあるんですね」
「そういうことだ、ただこれは我々だけではない」
「海自さんだけじゃないんですか」
「全ての国の海軍でもだ」
「夏は白ですか」
「そうだ、イギリス海軍からはじまったことだ」
ロイヤル=ネービーだ。暑い夏の南洋の日差しを避ける為に白い軍服を選んだのだ。
「それが世界に広まった」
「ああ、そうだったんですか」
「海軍はどの国も夏は白だ」
そして冬は黒である。
「そうなっている」
「成程、そうですか」
「白い靴はな」
工藤はその白い靴の話もはじめた。
「少し動けば汚れる、そして汚れが少しでもあればだ」
「服装の再チェックですか」
「まさに爆弾を扱う様な感じだった、江田島ではな」
「制服や靴が爆弾扱いですか」
「本当に苦労した、夏は余計にな」
「警察そこまで厳しくなかったですね」
高橋は工藤の靴磨きを見ながら言った。
「とてもそこまでは」
「そうだろうな」
「江田島が特別なんですね」
「そうだと思う、三つの自衛隊の中で最も厳しい学校だからな」
「いつもお話してる通りですね」
「そうだ、とにかく身だしなみを整えることでも時間を費やした」
「あと勉強もですね」
学校であるからにはこれも付き纏う、実は自衛隊は常に勉強をする世界でもあるのだ。
「それもですね」
「そうだ、他には当直もあったからな」
「凄い時間がなかったんですね」
「なかった、とにかくな」
「大変な八ヶ月だったんですね」
高橋もあらためて思うことだった。
「本当に」
「教育隊の時よりもな」
「自衛隊って教育隊の時に一番締めるんじゃないんですか?」
高橋は聞いた知識から問うた、自衛隊以外の組織でもそうだが。
「そうじゃないんですか?」
「それはそうだが」
「幹部候補生学校はですか」
「幹部としてあらためてな」
鍛え直すからだというのだ。
「根本から違う」
「それで工藤さんもですか」
「本当に鍛えられた、俺はまだ運動が出来て身だしなみやベッドメイクも得意だったからいけたが」
「そういうのが駄目だと」
「本当に辛い」
それが幹部候補生学校だというのだ、海上自衛隊の。
「むしろそうしたことに適性がある方が難しい」
「自衛隊は適性のところって言われますね」
「向いていない人間は何処までも向いていない」
「特殊な世界だからですね」
「本当に特殊な世界だ」
自衛隊の常識は世間の非常識とまで言われている、これは自衛隊がそれだけ特殊な世界だということであろうか。
「俺はそうした意味ではだ」
「工藤さんは?」
「自衛隊でしか生きられないのだろうな」
こう言うのだった。
「所詮はな」
「そうですか」
「定年、それまで生きていら
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